綾野剛「生きる沸点を探している人がいたら抱きしめてあげて」、映画『楽園』初日迎え感慨

映画『楽園』初日舞台挨拶が18日、都内・TOHOシネマズ日比谷にて行われ、綾野剛、杉咲花、佐藤浩市、村上虹郎、ユップ・べヴィン、監督の瀬々敬久が登壇した。

「悪人」「怒り」など映像化が続くベストセラー作家・吉田修一の原作「犯罪小説集」を、『64-ロクヨン-』などで知られる瀬々敬久監督が映画化。ある地方都市で起きた少女失踪事件。家族と周辺住民に深い影を落とした出来事をきっかけに知り合った孤独な青年・豪士と、失踪した少女の親友だった紡。事件から12年後に再び同じY字の分かれ道で少女が姿を消して、事態は急変する。

はじめに本作の劇伴を手掛けたコンポーザー・ピアニストのユップ・べヴィンがオランダから公開初日を祝して来日し、映画『楽園』のために書き下ろした「愛華」を生演奏しイベントはスタート。キャスト陣が登壇しそれぞれが挨拶を終えると、初日を迎えた気持ちを聞かれた綾野は「ようやく、みなさんに作品を託すことができるなという気持ちが強いです。私たちが何かを感じて欲しいとか、何かを届けたいという私たちの主観よりも、この作品は観た方に託すことで、みなさんの中に何が生まれるかが重要だと思います。ここから『楽園』はみなさんのものになります。大仕事の最後の受け渡しができてとても嬉しいです。」と初日を無事に迎えることのできた感謝を述べた。

杉咲は「ユップさんの曲を聞いて感じたんですけど、撮影した日々は本当に苦しくて、その日々が走馬灯のように蘇ってきて、自分にとってトラウマのような時間もあったりして、それでも私はこの映画を観て救われたので、ひとりでも多くの方々に観ていただけると嬉しいです。」と撮影中の気持ちを吐露した。

佐藤は「この映画を見てみなさんの中には“楽園”という言葉を悦楽的な刺激のある場所という意味合いを持って捉える方もいると思いますが、刺激的ではなくても人がいがみ合うことなく暮らせる場所を“楽園”と呼ぶのか、それは人によって捉え方が違うと思います。そのようなことをみなさんにも映画を観ながら考えてもらえると嬉しいです。」とコメント。村上は「僕の演じた広呂は作品の中では明るいキャラクターですし、作品も重たいものですし他のキャストの方は宣伝の中でも暗い服を着てることが多いなと思っていたので今日は自分が明るい服装で盛り上げる担当だな!と思ったら、、」と綾野の赤い衣装を見ながら村上はコメントし会場からは笑いが起こった。

オランダから来日し大勢の観客の前でピアノを演奏した気持ちを聞かれたユップは「オランダと日本の距離は遠いですが、音楽を演奏し瀬々監督の映画を通じてみなさんと絆を持つことができる素晴らしい経験をさせてもらっています。」と喜びを語った。

本作の主題歌である〈一縷〉を聴いたときの感想を綾野は「僕は映画を観終わった後〈一縷〉が流れた瞬間に大変助けられました。すべてを包み込み、掬い取ってくれて、なんとか立ち直るきっかけをくれたと思いとても感謝しています。(野田)洋次郎くんからもメールを頂いて『上白石さんの声でなければこの楽曲になっていなかった』と絶賛していましたので、彼女の声は真実が何も役に立たない時代になったなと思う瞬間もありましたけど、そんな時にあの声を聞くと真実を照らしてくれる声もあるんだなと思いました。」と楽曲の印象を語った。

役作りについての質問をされた佐藤は「役作りは感情の沸点をどこに持っていくのかを意識しました。人はどのような理由をもってそのように行動するのか、どういう状況下で人は壊れるのかということを監督と話しました。私が演じた善次郎も劇中のあるシーンを沸点にすることを決めてそのシーンに持っていきました。」と役作りついて明かす。

最後に綾野が「浩一さんの沸点の話がありましたけど、僕と浩市さんは生死や怒りに対して沸点を持ち、映画の中を生きていました。世の中には陰惨な事件が沢山ありますし、Iターン、Uターン含め地方と中央の関係を見つめ直して力を合わせなければいけないと心から思います。紡と広呂は生きるということに沸点を持っています。みなさんも生きる沸点を探している人がいたら抱きしめてあげてください。」と本作に込めた想いを力強く語りイベントは終了した。

映画『楽園』は全国公開中

(C)2019「楽園」製作委員会

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作品情報

楽園

楽園

4.0
2019/10/18(金) 公開
出演
綾野剛/杉咲花/村上虹郎/片岡礼子/黒沢あすか/石橋静河/根岸季衣/柄本明/佐藤浩市 ほか
監督
監督:瀬々敬久/原作:吉田修一