『サイダーのように言葉が湧き上がる』特集|忘れかけていたあの日のときめきを呼び覚ます“青春ラブグラフィティ映画の新たな金字塔”

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』特集

サイダーのように言葉が湧き上がる
(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

コミュニケーションが苦手でいつもヘッドホンをつけている俳句好きの少年・チェリーと、矯正中の大きな前歯を隠すためにマスクをはずせない少女・スマイルが、ひょんなことから郊外のショッピングモールで出逢い、SNSを通じて交わす言葉やレコードに収められた音楽の力に導かれて距離を縮めていく、次世代のボーイ・ミーツ・ガール青春アニメーション映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』が7月22日(祝・木)より全国公開される(文:渡邊玲子)。

◆“かつての少年・少女たち”をも虜にする青春ラブグラフィティ映画の誕生

サイダーのように言葉が湧き上がる
(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

「言葉と音楽」をキーワードに制作された映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は、SNSや動画配信といった今どきのコミュニケーションツールをふんだんに盛り込みながら、日本の伝統文化である「俳句」と海外発の若者文化である「タギング(落書き)」とを融合させ、恋を通じて自身のコンプレックスと向き合い成長していく少年・少女の「ひと夏の青春」を描いた物語。

サイダーのように言葉が湧き上がる
(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

さまざまなコンプレックスを抱えた思春期真っ只の少年・少女はもちろん、“恋は遠い日の花火”となってしまった“かつての少年・少女たち”をも、必ずや甘酸っぱい気持ちにさせてくれる一服の清涼剤のような「青春ラブグラフィティ映画」が、ここに誕生した。

◆イシグロキョウヘイ初のオリジナル劇場作品&フライングドッグ10周年記念作品

サイダーのように言葉が湧き上がる
(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

過去に「四月は君の嘘」や「クジラの子らは砂上に歌う」などを手掛け、その繊細で叙情的な演出が高く評価されてきたアニメーション監督のイシグロキョウヘイによる初のオリジナル劇場作品でありながら、「マクロス」シリーズをはじめ、アニメーションの劇伴やアニソン制作において常に第一線を走り続ける音楽レーベル「フライングドッグ」の10周年記念にあたる作品として、新旧の豪華なスタッフ・キャストが一堂に集結している。

◆懐かしのレコード盤が呼び起こす、ある一夏の思い出と現代の若者がシンクロする恋物語

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(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

物語の舞台となるのは、とある地方都市の畑の真ん中に佇むショッピングモール。コミュニケーションが苦手で、人から話しかけられないようにいつもヘッドホンをしている少年・チェリーは、スマホケースの中に季語が記された「歳時記」を忍ばせ、口には出せない気持ちを俳句に詠んではSNS上にアップしていた。

一方、矯正中の大きな前歯を隠すため、いつもマスクをしている少女・スマイルは、「スマイル・フォー・ミー」を合言葉に、日常の中に散らばる“カワイイ”を見つけては動画配信者として活動しながら、面倒見の良い姉ジュリとガジェット好きの妹マリとともに、賑やかな毎日を送っていた。

サイダーのように言葉が湧き上がる
(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

そんな2人が、ある日街の中心部にあるショッピングモール内でぶつかり、互いのスマホを取り違えるというハプニングに見舞われる。だがそれをきっかけに連絡先を交換した2人は、SNSを通じて「いいね!」を送り合うようになり、リアルでもバイト仲間として顔を合せるようになる。その後2人はバイト先のデイサービスに通う老人・フジヤマが、いつも空っぽのレコードジャケットを抱えては大切な中身(レコード)を探しまわっている理由を知り、フジヤマの代わりに自分たちでそのレコードを見つけ出そうと試みる。

サイダーのように言葉が湧き上がる
(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

チェリーの俳句を街にタギング(落書き)するのが趣味のラテンアメリカ系の「ビーバー」や、ショッピングモール内のリサイクルショップで働くアイドルオタクの「ジャパン」、フジヤマの孫の「タフボーイ」らの協力を得て、フジヤマの想い出のレコードを探すうち、互いが抱えるコンプレックスに対して魅力を感じはじめ、いつしか距離も縮まっていく2人。だが、チェリーは家の都合で夏祭りの当日に引っ越すことをスマイルに言い出すことができず、2人の想いはすれ違ってしまうのだった……。

◆市川染五郎×杉咲花の声が生み出す“みずみずしい化学反応”、リアル高校生が詠んだ俳句の数々

サイダーのように言葉が湧き上がる
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初映画、初声優、初主演となる歌舞伎界の超新星・八代目 市川染五郎と、ドラマや映画で幅広く活躍する若手実力派女優の杉咲花、というフレッシュな2人が主人公の声を担当するほか、山寺宏一や花江夏樹といったベテランの声優陣が、しっかりと脇を固めている。

演技も声優も未経験ながらも幼い頃から歌舞伎に打ち込んできた市川染五郎と、繊細な芝居の経験も豊富な杉咲花を掛け合わせたことによって化学反応が生まれたことが、みずみずしい高校生の青春を綴った本作に、豊かさとリアリティをもたらしている。

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(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

また、タイトルにもなった「サイダーのように 言葉が湧き上がる」をはじめ、「夕暮れの フライングめく夏灯」や「やまざくら かくしたその葉 ぼくはすき」など、作品中でチェリーが詠み、ビーバーによって町中のいたる場所にタギング(落書き)される俳句群は、実際に高校生たちが紡いだ言葉によるものであるから驚きだ。

◆牛尾憲輔×80年代のシティポップ調ビジュアルの相乗効果でよりエモーショナルに

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映画 聲の形』や『リズと青い鳥』などの劇伴制作でも知られる「agraph」の牛尾憲輔が生み出す旋律も、1980年代に一世を風靡したイラストレーターの鈴木英人やわたせせいぞうを思わせる、どこか懐かしくも新しいシティポップ調のビビッドなビジュアルの世界に、エモーショナルな奥行きを与えている。

◆大貫妙子の歌声が呼び覚ます“青春ラブグラフィティ映画の新たな金字塔”

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(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

物語において重要な役割を果たす劇中歌に、日本のポップ・ミュージックにおける女性シンガー&ソング・ライターの草分け的存在である大貫妙子を、そしてエンディングの主題歌には人気急上昇中のバンド「never young beach」を起用していることからも、世代を超えて愛されるカルチャーの要素が詰めこまれた作品であることが伝わってくるはずだ。

レコードショップを営んでいた老人・フジヤマの若かりし頃のエピソードを謎解きの要素として入れることで、作品の世界がより一層深みを増したばかりでなく、大貫妙子の歌声の登場の仕方が予想の斜め上を行くほど粋で贅沢であることも、ここで声を大にして伝えておきたい。

サイダーのように言葉が湧き上がる
(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は、リアルタイムで青春を満喫している若者たちの心に響く映画であるのはもちろんのこと、遥か昔に青春を駆け抜けた大人たちにこそ、ぜひとも観て欲しい1本だ。忘れかけていたあの日のときめきを呼び覚ます“青春ラブグラフィティ映画の新たな金字塔”と呼ぶにふさわしい極上ムービーであると言えるだろう。

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は7月22日(祝・木)より全国公開

公式HP:http://cider-kotoba.jp/

(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

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作品情報

サイダーのように言葉が湧き上がる

サイダーのように言葉が湧き上がる

3.8
2021/7/22(木・祝) 公開
出演
声の出演:市川染五郎/杉咲花/潘めぐみ/花江夏樹/梅原裕一郎/中島愛/諸星すみれ/神谷浩史/坂本真綾/山寺宏一/井上喜久子 ほか
監督
イシグロキョウヘイ