秋といえば“芸術の秋”。絵画、彫刻、演劇、音楽など様々な“芸術”がありますが、映画も“芸術”のひとつ!いつもは娯楽として映画を楽しんでいる人にもおすすめの、“芸術の秋”ならではの鑑賞体験ができる映画をご紹介します!
■1:落下の王国 (2006)
──世界有数のロケーションと美しい衣装に彩られた色彩豊かな“映像美”
撮影期間に4年もの歳月をかけた素晴らしい映像の数々は、CGを一切使っていない全てが本物。世界20ヵ国以上という地球規模のロケーションを行っており、「万里の長城」や「タージ・マハル」、「ファテープル・シークリー」など13の世界遺産も登場します。実在の場所で撮影が行われながらも、おとぎ話のような物語の世界観に驚くほど合っていて、どこを切り取っても「絵になる」シーンの連続に思わず息を呑みます。さらに、映画に彩りを添えているのが細部までこだわった鮮やかな衣装。米アカデミー賞受賞デザイナーの石岡瑛子氏が手掛けた豪華絢爛な衣装にも目を奪われます。
<あらすじ>
1915年。映画の撮影中に大怪我を負い、病室のベッドに横たわるスタントマンのロイ(リー・ペイス)。自暴自棄になっていた彼のもとに、腕を骨折して入院していた5歳の少女・アレクサンドリア(カティンカ・ウンタルー)が現れる。ロイはある目的に彼女を利用するため、気を引こうと思いつきの物語を聞かせ始めるが……。
■2:ティム・バートンのコープスブライド(2005)
──生者の世界=モノトーン&死者の世界=カラフルで描く“ファンタジー世界”
ティム・バートンが生み出したカワイイけどちょっと不気味な個性的キャラクターたち。本作はキャラクターの人形を作成し、1コマずつ動かして撮影されたアニメーション。モノトーンで暗く活気がない「生者の世界」とは対照的に、「死者の世界」はカラフルで生き生きとして描かれ、その世界観が他にはなく独特。ホラーのような雰囲気もありながら、おどろおどろしくならないのは、キャラクターを含めその世界観を形作る街並みや小物などの造形の手作り感が可愛らしく感じさせるからかもしれません。
<あらすじ>
19世紀のヨーロッパの片隅にある小さな村。人々はみんな活気がなく、村全体が暗く重苦しい雰囲気に沈んでいた。そんな村で、結婚式を明日に控えるカップルがいた。結婚式前夜、誓いの言葉が上手く言えない内気な花婿ビクター(声:ジョニー・デップ)は、落ち込んでしまい暗い森の中へ入っていった。そこで、誓いの言葉を練習していたはずが、死体の花嫁(声:ヘレナ・ボナム=カーター)にプロポーズをしてしまう……。
■3:真珠の耳飾りの少女(2003)
──フェルメールの作品世界に浸れる“絵画のような美しさ”
あまりにも有名なフェルメールの代表作の一つ「青いターバンの少女」。この絵画に着想を得て描かれた、秘められた愛の物語にも心を奪われるが、彼の絵画の美しさを映像美で伝えているところが本作の魅力。「光の魔術師」と呼ばれることもあるフェルメールの絵画の特徴のひとつが“光”の描き方。映画の中にも、柔らかい光と質感が魅力的な絵画を再現したかのような、美しいシーンがたくさん登場します。また、フェルメールの絵画には日常風景を描いたものが多く、その構図を思い起こさせるようなシーンもあり、彼の物語とともに「絵画のような美しさ」を堪能できます。
<あらすじ>
1665年のオランダ、17歳の少女グリート(スカーレット・ヨハンソン)は家計を支えるため、画家ヨハネス・フェルメール(コリン・ファース)の家へ奉公に出される。妻のカタリーナ(エシー・デイヴィス)から、アトリエの掃除を命じられたグリートは、フェルメールの絵の美しさに強くひきつけられる……。
■4:千と千尋の神隠し(2001)
──歴史ある建築物が作り出す“ノスタルジックで神秘的な世界観”
主人公の千尋が迷い込んだのは温泉のある“油屋”。その建物は“トンネルを抜けた先にある不思議な町”という神秘的な雰囲気にぴったり。どんな疲れも癒やされそうで「行ってみたい」と思うほど素敵な建物には、実はモデルがあるとされています。そんな場所で繰り広げられる千尋の物語を楽しみながら、どこか和風でもありノスタルジックでもある建物にも目を向けると、歴史ある建築物を思わせる魅力とレトロな雰囲気に浸れます。
<あらすじ>
人間が入ってはいけない世界に迷い込んでしまった10歳の少女・千尋。その町で千尋が生き延びる条件はただふたつ。湯婆婆という強欲な魔女のもとで働くことと、名前を奪われて人間世界の者で無くなること。千尋は「千」という名前で、先輩のリンや、謎の美少年ハクに励まされ、懸命に働き始めるが……。
■5:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) (2014)
──映画界と演劇界の対比を映像で描いた“芸術のなかの芸術”
映画と演劇──芸術の中でも対比されることが多いこの2つ。本作はその舞台裏を描いただけでなく、芸術につきものである批評家との関係までも絡めた、“芸術の世界”を堪能できる物語になっています。本作で最も特徴的な点はその物語─ではなく、撮影と編集にあります。切れ目がないようにシーンを巧みにつないだ全編ワンカット風の映像に、映画製作に携わる人でなくても「一体どのように撮影したのか」と釘付けになります。映画とは対をなす演劇を描きながら、場面転換なしでシーンを繋ぐという映画でしかできない表現で映像化している点に芸術性を感じます。
<あらすじ>
かつてスーパーヒーロー映画『バードマン』で人気を博したが、現在は失意の日々を送る俳優リーガン(マイケル・キートン)。自らレイモンド・カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」を脚色し、演出と主演を務めるブロードウェイの舞台に、再起をかけて挑むのだが……。
■6:8 1/2(1963)
──幻想と現実が交錯し、芸術家の脳内へといざなう“体感映画”
映画のオープニングから、現実に起きていることなのか、夢か幻想か、一見わからない映像の連続で、最初は混乱に陥るかもしれません。映画製作にあたる映画監督の苦悩を描いた本作では、製作中に頭の中をめまぐるしく巡っているであろう数々の苦悩や幻想が映像となって映されます。それはまるで芸術家の脳内を覗いているかのよう。芸術作品を眺めるように、映像とそこに映る俳優、女優、音楽を目や耳で“体感”することが、この映画の楽しみ方のひとつで、まさに“芸術”的な映画です。
<あらすじ>
43歳の映画監督グイド(マルチェロ・マストロヤンニ)は、療養のため湯治場にやってきた。新作の準備を進めて5ヶ月が過ぎるが、すでにクランクインを2週間も延ばしていた。グイドの前に、逃れようのない現実が夢やまぼろしとなって表れ、映画の構想は一向にまとまらない。療養中も次々と昔の思い出が蘇り、グイドが混乱と失意に陥る中、製作の準備は着々と進められていく……。
以上、映画で”芸術の秋”を味わうための6選でした!最後までお読みいただきありがとうございました。気になった作品があったら、是非映画ランドでチェックしてみてください♪