『鳩の撃退法』
西野七瀬インタビュー
直木賞作家・佐藤正午の同名小説をタカハタ秀太監督が藤原竜也主演で映画化した『鳩の撃退法』が、8月27日(金)からいよいよ全国公開される。藤原演じる天才作家・津田の行きつけのコーヒーショップの店員・沼本を演じた西野七瀬に、本作の見どころや藤原の芝居を目の当たりにした印象、西野が役を演じるときに心掛けていること、これから目指したい理想の役者像について、たっぷり語ってもらった。(取材・文:渡邊玲子/撮影:金山寛毅)。
──時系列が入り組んだ複雑な構成ですが、完成した映画を観た感想は?
西野:「え!?これ、どういうことなんだろう?」と思いながら台本を読んでいたので、いざ映像化されて全貌が分かったときに、「あ、なるほどこうだったんだ!」と腑に落ちた部分もありました。とはいえ何が本当なのかいまだによくわからないところもあって、もう一回確かめたくなるというか、何度も観返したくなるような映画なんですよね。あまり最初から全てを完全に理解しようとはせず気軽に観ていただいても、きっと面白いんじゃないかなと思いますね。
──なかでも、西野さんが一番面白いと感じたところはどの場面ですか?
西野:ニセ札が、思わぬところである人のところから別の人の手へと次々と渡っていくところが一番ワクワクしました。ちょっとした不注意からとんでもない事件に巻き込まれたりするので、この映画を教訓に、私も物の管理にはくれぐれも気をつけようと思いました(笑)。藤原竜也さん演じる津田と風間俊介さん扮する秀吉がコーヒーショップで初めて会った日の何気ないやりとりにも、ぜひ注目していただけたらと思います。のちに秀吉がここに来るまでの行動を知ってから改めてあの場面を振り返ると、2人のやりとりが全然違って見えてくると思います。
──映画にちなんだ質問です。直感で答えてください。西野さんの目の前に、いまキャリーケースが届きました。中を開けました。大金が入っていました。さあ、どうしますか?
西野:お返しします!本物の沢山のお札自体、私は一度も見たことがないので、『うわ、すごい!』とちょっとだけ見てから、すぐお返しします!出どころがわからないと怖いので……。
──では、仮に出どころがわかったとして、「譲ります」と言われたらどうしますか?
西野:いやぁ、それも怖いなぁ。大金を丸ごと何かに使い切って、すぐに自分の手元からなくしたいです。うーん、そうだなぁ……。おじいちゃん家のリノベーションに使いたいですね。古い家なのでお風呂場とかは最新のものに変えないと、特に冬はちょっと心配なので。昔ながらの平屋の日本家屋で、それほど大きくはないんですが、小さい頃からおじいちゃんの家が私はすごく好きで、よく遊びに行っていたんです。だから家の雰囲気は残しつつ、老朽化しているところをちょっと直してあげたいです。
──なるほど、優しいお孫さんですね!藤原竜也さんとの初共演はいかがでしたか?
西野:津田と沼本との関係は、コーヒーショップの店員と常連客の割には結構距離が近い設定だったのですが、私自身は藤原さんと初対面で緊張もあって、最初のうちは距離感の近いお芝居に苦戦していたんです。でも監督が「一回ハグしてみたら?」とか「お姫様抱っこしてみてもらったら?」と、まずは物理的に距離を近づける方法を提案してくださって。そのおかげでだいぶユルっとできたので、藤原さんとタカハタ監督にはとても感謝しています。
──藤原さんのお芝居を目の当たりにした印象は?
西野:「いつ息継ぎをしてるんだろう?」と思いながらずっと藤原さんを見ていました(笑)。藤原さんはご自身で「津田はこういう風に早口でしゃべるキャラクターだから」と最初から決めてお芝居されていて。主演で出番も一番多く、相当な覚悟が必要なことですよね。会話のテンポが早いので、こちらも一切気が抜けなかったです。カメラが回っている時に津田のスイッチが入る感じで、役への切り替えもすごく早かったです。
──西野さんにとって、「演じる」とはどういう感覚ですか?
西野:毎回、「私にできるのかなぁ」という不安から始まって、現場でもすごく悩んだりしつつ、なんとか監督さんやスタッフさん、共演者の方と一緒に作りあげていく過程がすごく好きなんです。不安がないと逆に怖いというか、「悩みたい」ってすごく思っちゃう。自分の中で安心したり満足したりしたくないので、あえて自分から不安材料を探しているような部分も私にはきっとあるんだと思います。その方が乗り越えられた時により達成感を感じるし、余裕を残したままで終わりたくないから、常に限界まで追い込んでしまうタイプなんです。自分の限界が更新されて、レベルアップしていってるといいなという願望もあると思いますけどね。いま私は27歳なんですが、20代のうちになるべくたくさん苦労しておかないと……って、自分の中で変なこだわりがあるんです。でも喉元過ぎれば……じゃないですが、毎回「大変だなぁ」と思っても、乗り切れると意外と忘れちゃうんですよね。
──沼本役を演じるにあたってどんなことを意識しましたか?
西野:『鳩の撃退法』は2020年の2~3月に撮影したんですが、この作品の後にも映画『孤狼の血 LEVEL2』『あなたの番です 劇場版』など、いくつか別の作品にも出演させていただいたので、自分の中ではどんどん上書きされてしまっているところもあって。いまとなっては「あの時の自分はどういう気持ちで演じていたんだろう?」って、分からない部分もあるんです。、沼本がどういう子なのか自分でも完全につかみきれないまま、現場に入った気がします。でも、沼本は割と直感に従って行動するタイプというか、次にどんな行動を起こすのか予測ができない人物なのかなって。普段私がお芝居をするときには、自分の身近に似たようなタイプの人がいないかなぁと探すことが多いのですが、今回の沼本だったら登場するたび印象が違うくらい一貫性がなくても成立するんじゃないかと思って。「沼本はこういう子だ!」って、自分の中であまり決めつけすぎないようにもしていましたね。
──キャラクターをつかみ切れないまま演じることは、西野さんにとっては怖いことではない?
西野:現場で相手の方と実際にお芝居をしてみないと分からなかったりすることもあるので、お家ではあくまでセリフを入れていくだけで、現場で監督や皆さんと一緒に作り上げていくかたちが多いんです。外見がキャラクターへのスイッチの切り替えにもなったりするので、ヘアメイクや衣裳の力も借りています。今回の沼本の髪型もあまりやったことがない感じで、ちょっとぶっきらぼうな喋り方も意識して。普段の自分と沼本は全然違いましたね。
──さらに経験値が上がった状態で改めて自分の演技を客観的に見て、どう感じますか?
西野:恥ずかしいです。でも当時の自分の全力で取り組んでいることなので、それは認めないといけないなと思います。ただ、改めて観ると「今だったらこうできるかな」と、毎回のように反省するところはありますね。きっとこの一年ちょっとの間に、自分の中で起きた変化も大きかったということだと思います。
──「まだ見せていない新たな自分の一面を見せていきたい」という思いもありますか?
西野:役を演じる上では、自分(西野七瀬)の要素はなるべく出したくないというか、むしろ消したいと思っているんです。まだまだだとは思うんですけどね。
──いま目の前にいらっしゃる西野さんご自身と、作品の役柄から受ける印象は全く違うので、消せていると思いますよ。でも、ご自身を消したいと思われる理由はなんですか?
西野:ヘアメイクや衣裳は自分の気持ちを切り替える上では大事だと思うのですが、ヘアメイクを変えても、特殊メイクをしない限り、顔はそこまで変わらない気がするので、せめて顔以外の部分はなるべく素の自分じゃないように見せたい、という思いがあるんです。でも、現実的にはなかなか難しいですよね。ちょっとした仕草とか身体の動きまでは、まだまだコントロールが難しいですね。もう少し上手にコントロールできるようになったら、もっと幅も広がるのかなぁって。前に「演じる役柄によって歩き方から意識して変えている」という役者さんもいらっしゃると聞いたことがあって。いつか私もそこまで行けたらいいなって思っているんです。
──そういった意味では、今回共演された藤原竜也さんは、まさにそれを体現されている役者さんであるような気がします。
西野:確かにそうですね。藤原さんからはとても刺激を受けました!
──素敵なお話をありがとうございました!
映画『鳩の撃退法』8月27日(金)全国ロードショー
(C)2021「鳩の撃退法」製作委員会 (C)佐藤正午/小学館
ヘアメイク:猪股真衣子(TRON)
スタイリスト:鬼束香奈子
ワンピース
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