「SUPPORT EIGA PEOPLE ON THE LAND.〜映画に関わるすべての人々をサポートする〜」をビジョンとして掲げる映画ランド。そんな弊社が、映画界で活躍する監督・スタッフ・役者にお話を伺う。
シリーズ累計発行部数55万部を超え、「10代女子が選ぶ文芸小説No1」にも選ばれた汐見夏衛(しおみ なつえ)によるベストセラー小説が原作の映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』が9月1日(金)より公開。監督を務めるのはドラマ「明日カノ(S1)」や大ヒット作『劇場版 美しい彼〜eternal〜』など、話題作を続々と手がける酒井麻衣。過去の「ある出来事」が原因で、優等生を演じている女子高生・茜を演じるのは、non-no専属モデルを務めるなど同性から圧倒的な支持を集める久間田琳加。そんな2人に今作についてお話を伺った。
酒井麻衣
SAKAI MAI
1991年生まれ、長野県出身。
京都造形芸術大学卒。
2017年『はらはらなのか。』で商業監督デビュー。「映像作家100人2020」に選出され、以後も数多くの映画・ドラマ・MVを手がける。代表作にドラマ「恋のツキ」(18)、「荒ぶる季節の乙女どもよ。」(20)、「明日、私は誰かのカノジョ」MV なにわ男子『初心LOVE』優里『レオ』(22)、映画『劇場版 美しい彼~eternal~』(23)などがある。
久間田琳加
KUMADA RINKA
2001年生まれ、東京都出身。
雑誌「nicola」でモデルデビュー。現在は「non-no」専属モデル。ドラマ「ブラザー・トラップ」、映画『おとななじみ』(23)で主演を務める。その他の主な出演作に連続ドラマW-30「ながたんと青と-いち日の料理帖-」Netflixシリーズ「君に届け」(23)などがある。日本テレビ系ドラマ「こっち向いてよ向井くん」第二話に出演して話題を集めた。
茜に寄り添いながら、演じてもらった
――汐見夏衛さんの原作を読んだ際の感想を教えてください
酒井:コロナ禍前に書かれた作品なのですが、マスクを手放せない女の子というところがすごく魅力的だなと思って、今の中高生たちに響く話なのでは、と思いながら、そういう目線で読んでいました。茜と青磁(せいじ)の屋上のシーンが特に好きで。爽快感というか、自分の鬱屈とした気持ちを代弁してくれたようなところがあり、すごく印象的だったので、映画化する時はそこを大事に描きたいなと思っていました。
久間田:私が一番最初に読んだ時は、茜の気持ちがすごく分かるといいますか、学生時代自分もこうだったよなというような。周りのテンションに合わせたり、みんな今どう思ってるんだろう?みたいな心情が、すごくリアルに描かれているなというのを感じました。過去に感じたことのある気持ちを投影できるなと思いました。
――監督がこの作品を映画化する上で意識されたことはありますか?
酒井:マスクの存在はすごく意識していました。コロナ禍で一時期私たちもマスクを手放せない生活になり、学生さんは3年間の学生生活でクラスメイトの素顔を知らない子たちも出てきている中での映像化だったので、マスクはお守りみたいなもので、それを否定するような描き方はしたくなかったので、繊細に茜の心理・感情を大事にしました。
あとは、2人ともある意味強がっていて、そこが10代の高校生として美しいんですが。青磁の本当は弱いところをそのまま隠さずに描きたいなと思いました。
――今作で久間田さんとご一緒されていかがでしたか?
酒井:とてもよかったですね。今日久しぶりにお会いできて嬉しいです。もともと私は久間田さんのことを一方的に知っていて、雑誌で素敵な子だなと思いながら拝見させてもらっていたんですが、実際にお会いして、こんなに素直で笑顔が魅力的なんだというのも間近で体感して。本当に素直なんですよ。
すごく考えられていますし、素直で真面目だからこそ、この映画で主演をやるとなった時に、ちょっと不安そうな感覚があるように感じられて、そこもまたいいなと思いました。茜そのもの、茜の抱えている不安ももうすでに持っているというか。その不安に左右されるのではなく、素直に茜に寄り添いながら演じていただけたという感じです。
マスクでの表情を研究
――久間田さんが演じられた茜という役はどんな人でしたか?
久間田:なかなか自分の気持ちを言えない子。それは色々あったからなのですが、本当はとても優しい子なんだよというのを、台本を読んだ時にも感じました。真っすぐで、人のことを考えられる、心から応援したくなるなというのが最初の印象だったんですよね。青磁みたいに自分とは正反対にいるような人を、普通だったら嫌いの方に走っちゃうところを、気になる存在として受け取れるところが、真っすぐというか。嫌な目のフィルターがない子というところが魅力的に感じました。
だからこそ茜もまた自分の気持ちに素直になれたし、青磁ともすごくいい関係性を築くことができたんだろうなと思いますね。
――茜に共感する部分はありましたか?
久間田:クラスメイトとのシーンを撮る時は、どんな顔しているかな、みんな今楽しんでくれているかな、みんなどれくらいの熱量で文化祭の練習をしているかな、みたいなのを考えちゃう、そこが強く共感できました。そこに一人目立つ人がいて気になるみたいなのは、青磁役の白岩さん自身の魅力そのままでした。とても自由でしたよね。
酒井:そう、自由だし、いるだけでオーラを放っていました。白岩さんご自身は、フランクにクラスメイトの方や久間田さんに話しかけていましたけど、クラスメイト役の皆さんは、白岩さんに第一声を話しかけるのはちょっと勇気がいるくらい、カリスマ的オーラみたいなものを放っていましたね。
久間田:その白岩さんを見て余計に茜になれた感じがします。
酒井:喋ってなくても、なぜか目立っていましたね。
――クラスにマスクをしている方が他にいないという意味では茜も目を引きますが、マスクをしての演技は難しくはありませんでしたか?
久間田:演じてみて分かったのは、けっこう口元で表情って決まるんだなということ。口元が全部隠れているのにはちょっと苦労しました。茜と理由は違いますが、マスクをする機会が時代的にも多かったので、なるべく鏡を見たりして。こうしたらこう見えるのかとか、こういう角度だとマスクはこうなるんだ、というのを見るようにしていました。
――演じるうえで、監督から久間田さんに伝えたことはありますか?
酒井:何かありましたか?
久間田:(笑)。いっぱいありましたよ。
酒井:私の中ではすごく安心して一緒に取り組めました。久間田さん自身はプレッシャーも感じられていたとは思いますが。久間田さんとは初めての撮影の現場だったんですが、安心感があったので、そこまでオーダーをした覚えはなくて。
先ほどのマスクでのお芝居も、きっと影での久間田さんの努力があってこそだと思うんですが、マスクをつけているから芝居が伝わらないという事はなかったです。特に眉毛と目のお芝居がすごく良くて、顔だけじゃなくても、動きで茜が何を感じているのかというのは感じられました。マスクがあったから表情が見えなかったとか、感情が見えなかったということはなかったです。すごくよかったですね。
あとは茜に関しては、声の話をしたかな。
久間田:そうですね。
酒井:初めはすごく気を張られていたんですよね。現場に入る前に、本読みや稽古を何回かさせてもらって。久間田さん自身のすごく素敵な音色の声色というよりは、張っていつもの久間田さんじゃない声を出されていたので。それは役によっては正解だと思うんですが、今回に関しては久間田さん自身のその声のトーンがすごく私は魅力的に感じるから、そのトーンでやってほしいですと話はしました。
空気をいい意味で壊してくれたのが白岩さん
――撮影中のエピソードや思い出があれば教えてください
酒井:すごく必死でした(笑)。
久間田:私も同じことを考えていました(笑)。
酒井:みんな必死で、短距離走を全力で駆け抜けたような感じ。短距離走を駆け抜けている時、周りの景色がどうなのかって覚えてないじゃないですか。それぐらいの全力さがみなさんあったんですよ。
久間田:すごくわかります。
――撮影期間がタイトだったのでしょうか?
酒井:期間もタイトですし、みんなの集中力とやる気がグッと詰まった時間だったんですよ。ちょっとエピソードを思い出しますので、久間田さんお願いします(笑)。
久間田:私も必死というのが最初に浮かんではきますが、その空気をすごくいい意味で壊してくれたのが白岩さんでした。ここで?というところでボケてくれたりするんですよ。でもそれが私の緊張をほぐしてくれたし、自由な青磁そのもの、という感じがして。もしみんなで必死になっていたら、また違う作品になったのかなと思うので、白岩さんの存在感はありがたかったです。
酒井:久間田さんと白岩さん2人に対しての思い出なのですが、屋上に上がっての撮影時に、脚本に書かれてないところで一部フリーでお芝居をしてもらったんです。屋上全体が映るのでちょっと隠れたところにいたら、白岩さんと久間田さんが「ねえ、フリーって何すればいいの?」と困っていて。マイクが付いているので、声が聞こえているんですよ(笑)。
久間田:(笑)。
酒井:しめしめと思って、「よーい、はい」と言ったら、その瞬間に2人はパッと茜と青磁になって。茜ちゃんが「絶対さっきのこと言わないでよ、明日」と言うと青磁も「言わねえよ」と追いかけっこをし始めて。あの柔軟性というか、しっかり役柄のままそれができるというのは、役として、キャラクターとして、生きていてとても良いなと思いました。さっきまで「どうしよう」って言っていたとは思えない。
――最後に記事を読んでいる方にメッセージをお願いします
酒井:純度が高くて、綺麗で、青春のヒリヒリを思い出しながらも、言いたくても言えないこと、自分とどうやって向き合うかということを映している映画なので、どの年代の方が観ても救われる部分があるんじゃないかなと思っています。悩みとか、ちょっと今日鬱屈としているな、みたいな日に、映画館でこの映画を観ていただけたらすごく嬉しいです。
久間田:茜の気持ちが分かる方は結構いらっしゃるんじゃないかなと思います。今はSNSもあり、色んな情報が入りすぎちゃって、本当の自分はどこだっけってなっちゃうと思うんですよ。そういう時にこそ、この映画を観て欲しいなと思いますし、映像がとっても綺麗なので、それにたくさん癒されてほしいなって感じます。
(取材・写真:曽根真弘/ヘアメイク:(久間田琳加)Mien(Lila)/スタイリスト:(久間田琳加)Toriyama悦代(One8tokyo))
『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』は絶賛上映中
監督:酒井麻衣
原作:汐見夏衛「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」(スターツ出版 刊)
出演:白岩瑠姫(JO1) 久間田琳加 箭内夢菜 吉田ウーロン太/今井隆文 上杉柊平 鶴田真由
脚本:イ・ナウォン 酒井麻衣
音楽:横山克 濱田菜月 主題歌:JO1「Gradation」(LAPONE Entertainment)
配給:アスミック・エース
©2023『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会
公式サイト:https://yorukimi.asmik-ace.co.jp/
公式X(旧Twitter):@yorukimi_movie