第6回日本学生映画祭が3日、都内・TOHOシネマズ六本木ヒルズにて行われ、トークゲストとして大友啓史監督、放送作家/映画活動家の松崎まことが登壇した。
日本学生映画祭は、第29回東京国際映画祭との提携企画として催される上映イベント。東京学生映画祭、TOHOシネマズ学生映画祭、京都国際映画祭の三大学生映画祭のグランプリ作品が一同に集う。TOHOシネマズ学生映画祭ショートアニメーション部門と東京学生映画祭アニメーション部門の2冠を達成した見里朝希の『あたしだけをみて』や、京都国際映画祭実写部門のグランプリ作品『The Bad Old Us』など全5作品が上映された。
映画3部作『るろうに剣心』シリーズや、公開を控える最新作『ミュージアム』『3月のライオン』で知られる大友監督。学生映画全5作品を鑑賞して「映像の間口が広がって、ストレートにアイデアを実現できる方法は、確実に機材の進歩とともに発展してきましたよね。なかなか発想として生まれてこない人形を使ったアニメーション。身についた社会性を描き、食い入るように観てしまったドイツ映画。いじめなどを等身大の目線かつ変わったアプローチをした高校1年生ならではの作品。ロケーションの魅力を最大限に活かした神話性の高いドラマ。一発のアイデアの中に『どこに物語が向かっていくんだろう』という奥を潜めたアニメーション。規制のない学生映画の魅力ならでは、作った人の感情がむき出しになった映画は観ていて面白かった」などと統括した。
松崎から「カメラや編集の部分でプロとアマチュアに基本的な差はないと感じていて、いまの学生はその垣根を越えてきやすいのでは?」という質問が及ぶと、大友監督は「越えてきやすいと思いますよ」と吐露。「間口は広いと思います。出口はどこかわからないけど、そこから先は真面目にやると長い。誰でも撮れるけれども、ストーリーテリングも含めて何を映すか、逆に何を映さないか。もちろん食っていくことも考えなければならないから、そう思うと、間口が深いだけに罪深い」と言及した。
イベントでは、会場に集まった学生とのQ&Aも実施。「『ミュージアム』で大変だった撮影は?」という声に、大友監督は「カエル男のマスク造形とか、何万トン使って雨を降らせたこと」と答え、「マンガの原作って、所詮何やっても言われるんだよね(笑)独自のことをやると『勝手なことやるな!』、忠実にやっても『同じじゃねぇか!』って言われる。原作の持っている良いところと、実写にした時の『ん〜』というところをしっかり見極めないといけない。『ミュージアム』ではクライマックスを少し変えているんですが、シーンの状況をリアルに考えて、役者とその気持ちを共有する。漫画の肝を映画では全然違うアプローチをしていくんです。二次元の平面で作っているものと、生身の人間が体を動かすことは違いますよね。漫画と実写の見極めをニュートラルにすること、撮影より脚本段階からの見極めが大変ですね」と語った。
また、俳優を目指している学生からアドバイスを求められると「乱暴な言い方をすると、俳優は誰でもなれると思っています。演じることは日常的に誰もがしていることだから。大事なのは生活をちゃんとしていくこと。例えばサラリーマンをちゃんと演じられる俳優はなかなかいないと思うんです。ドラマの中で描かれてるような劇的でジェットコースターのような華々しい生活だけではない。要するに、ご飯を食べる、服を着る、やりたくない仕事でも気持ちを整えて向かう。極端なシチュエーションの理解は意外と簡単にできるんですが、普通の生活を生きていくことを理解することが一番大事だと思っているんです。俳優としてではないプライベートな部分を大事に生きていく、当たり前だけど一番難しい気もします。そういうことをちゃんとやっていそうな役者と、そうでない役者とでは、芝居に差が出てくると思うんです。結局、その人の日常的な人生が全部丸見えになっちゃう仕事だと思う」とメッセージを贈った。
大友啓史監督の最新作『ミュージアム』は11月12日より全国公開、『3月のライオン』は2017年【前編】3月18日/【後編】4月22日より全国公開される。
第6回日本学生映画祭 上映作品
Lily Erlinger 監督作『The Bad Old Us』(第18回京都国際学生映画祭実写部門グランプリ)
坂上直 監督作『その家の名前』(第18回京都国際学生映画祭アニメーション部門グランプリ)
酒井日花 監督作『トイレハザード~一緒に食べよ~』(第10回TOHOシネマズ学生映画祭ショートフィルム部門グランプリ)
見里朝希 監督作『あたしだけをみて』(第10回TOHOシネマズ学生映画祭ショートアニメーション部門グランプリ・第28回東京学生映画祭アニメーション部門グランプリ)
村上由季 監督作『お姉ちゃんは鯨』(第28回東京学生映画祭実写部門グランプリ)