フランソワ・オゾン監督インタビュー|官能サスペンス『2重螺旋の恋人』

映画『2重螺旋の恋人
フランソワ・オゾン監督インタビュー

2重螺旋の恋人
フランソワ・オゾン監督(photo 岸本絢)

『スイミング・プール』『危険なプロット』などサイコスリラーの名手として知られる鬼才フランソワ・オゾンが、米国の女性作家ジョイス・キャロル・オーツの双子をテーマとした短編小説を大胆に翻案、4年の構想期間を経て放つ極上の心理サスペンス。

主人公クロエ(マリーヌ・ヴァクト)が、精神科医ポール(ジェレミー・レニエ)との幸せな生活をスタートするところから始まる。穏やかで誠実な恋人ポールと、姿形や声はそっくり同じだが傲慢で挑発的なルイが背徳の愛にのめり込んでいくさまが官能的に描かれる。

──精神分析のシーンがとても特徴的です。どのような点に特にこだわったのでしょうか?

フランソワ・オゾン監督(以下、オゾン監督):かなり以前から精神分析の治療の経験を映画的にしたいと思っていました。精神分析の治療は場面が変わりばえしないものになりがちですが、この映画ではもっと動きを捉え、精神分析医が患者の話を聞くように観客がこの療法を追うようにしたいと思いました。これらの最初のシーンは、視覚効果と視点の交替が言葉に対峙するように演出しています。

──双子を重要なキーワードの一つとして選んだ理由を教えてください。

2重螺旋の恋人

オゾン監督:魅惑的だがおぞましく芸術的なものとして双子を描きたいと思いました。もちろん『戦慄の絆』のことは改めて考えました。彼の作品も非常に有機的で、婦人科学について多くを語っていますが、大きな違いは双子の視点から語られていることです。しかしJ・C・オーツは2人の兄弟の間に板挟みになった娘の側から描いています。

──ジェレミー・レニエ起用について教えてください。

2重螺旋の恋人
フランソワ・オゾン監督(photo 岸本絢)

オゾン監督:ジェレミーと仕事をするのは 『クリミナル・ラヴァーズ』『しあわせの雨傘』に続いて3回目になります。ポールとルイを演じるため、私たちは優しい人と意地悪な人という対の法則に基づいてスタートしました。しかしすぐにジェレミーが複雑性をもたらし、最終的に把握するのが難しいのはポールの役だと分かったのです。彼が最もミステリアスで、最も表に出さず、多くの事を想像させ、投影できるのです。

──どんな話し合いをされましたか?

2重螺旋の恋人

オゾン監督:私たちは衣装、異なった容姿、髪型、立ち方や話し方に関しても検討しました。当初、私たちはルイの方が低くて響く声をしていると考えましたが、最終的には同じ声の方がより困惑させられると考えました。クロエの様に、私たちもポールとルイのどちらを前にしているのかわからなくなる時があるのです。

──心理スリラーとしての演出をするにあたって、特に工夫した点はどこですか?

2重螺旋の恋人
フランソワ・オゾン監督(photo 岸本絢)

オゾン監督:特に、作品の最初の数分間です。サスペンス形式を作用させながら、プロットを辿ってクロエを追い、精神的かつ幻想的に中断する瞬間を取り入れて、観客をぐらついた現実に留めておくことがその演出の狙いでした。これによって登場人物の想像と常に戯れ続けることができるのです。秘密は全て彼女の中に隠されており、彼女はその鍵を探し、私たちは彼女の探求に付き添って行くのです。私たちはクロエの頭の中、彼女のファンタズム、彼女のお腹の中に入り込むのです…。

映画『2重螺旋の恋人』は8月4日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開

©2017 – MANDARIN PRODUCTION – FOZ – MARS FILMS – FILMS DISTRIBUTION – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREA

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作品情報

2重螺旋の恋人

2重螺旋の恋人

3.4
2018/8/04 (土) 公開
出演
マリーヌ・ヴァクト/ジェレミー・レニエ/ジャクリーン・ビセット/ミリアム・ボワイエ/ドミニク・レイモン ほか
監督
フランソワ・オゾン