6月22日(月)、東京・時事通信ホールにて人気作家・東野圭吾の同名小説を映画化した『天空の蜂』完成報告会見が行われ、主演の江口洋介をはじめ、本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛、堤幸彦監督が登壇した。本編冒頭より13分の映像が披露された後、各々が出演への決意や、本作に込める想いを語った。
<巨大ヘリ・ビッグBの設計士、ヘリ墜落を阻止すべく奔走する主人公・湯原一彰役>
江口 とても危機感のある映画に仕上がりました。冒頭13分をご覧いただきましたが、これから面白くなるところです。最高の作品が出来上がりましたので、ぜひご覧いただければと思います。
<湯原の同期で、狙われた原発「新陽」の設計士・三島幸一役>
本木 驚きに満ちている作品です。予言の書である原作が600ページにも及ぶ内容であるにもかかわらず、2時間にまとめ上げた脚本家・楠野さんの凄さ。そして、難しい題材でありながら、しっかりとエンターテイメントに仕上げている堤監督、CGチームの努力の素晴らしさ、全てが合わさっています! また、この作品の中で私は仲間さんとちょっと怪しいイイ仲なんですけど、この撮影後に程なくして入籍を発表されていたので、おそらく私は仲間由紀恵独身時代最後の相手役だったと思います(笑)ぜひ多くの方々に観ていただかなくてはならない作品だと思っております。
<ビッグBと原発「新陽」を設計した錦重工業の総務課員、三島の恋人・赤嶺淳子役>
仲間 実は3日程の撮影だったので、この場に立たせていただいていいのか心配ではありましたが、もっと短い方(綾野剛)がいらっしゃいました(笑)本当に一人でも多くの方にご覧いただきたいと思っています。
<巨大ヘリ・ビッグBを奪った謎の男・雑賀勲役>
綾野 この日を迎えられて光栄です。この作品に参加できて、誇りに思っています。少しでも皆様に届けられるよう精一杯努めたいと思います。
──堤監督、ご自身でも「少しびっくりするような仕上がりになった」とコメントされていますが、改めてどのような想いで、本作に挑まれたのでしょうか。
堤監督 原作を拝見した時に、東野圭吾さんの未来の危機に対する先見の明に驚き、関わりたいと思いました。テロという現代の脅威だったり、3.11を通して生で危機感を感じた中、いかにこの題材をリアリティーをもって描けるか。そして、親子の物語であることに非常に多くの力を注ぎました。誰しもが親であり、子である、その思いをいかに映画的に消化していくか。ありとあらゆる意味で日本で映画にすべき題材だと思って映画にしました。自分だったらどんな立場でいるか、ぜひ考えてほしいです。
──また、完成した映画をご覧になって、手応えはいかがでしたか。
堤監督 自分で言うのもなんですが、本当にビックリしました。この凄さはぜひ劇場で体感していただきたい。特に音と、音楽はこだわっています。「ビッグB」のヘリコプターのモーター音は「まるで生き物のようにありたい」とオーダーしたので迫力が凄まじいですし、音楽は作曲家のリチャード・プリンさんがハリウッド映画のような仕上がりにしてくださいました。ぜひその辺もお楽しみください。
──本作では、8時間に懸ける男たちの熱いドラマやアクションシーンとともに、わが子を救おうとする父と子のドラマも非常に印象的でした。同時に、今の日本人にとって非常に深いテーマ性も持ち合わせている作品だと思います。江口さんはどのような思いや覚悟で、ご出演を決意されたのでしょうか。
江口 まず原作を拝見させていただいたのですが、恐怖をリアルに感じました。8時間の中でエンターテイメントに仕上がっていますが、子どもから大人まで伝わるような感動作に仕上がっていると思います。良い悪いではなく、人が考える、人が沈黙してはいけない、という熱いメッセージを感じました。「蜂に刺される」と本木さん演じる三島のセリフにもありますが、沈黙する群衆になってはいけないのだと思い、何か形で残したいと参加を決めました。
──本木さんは、本作のご出演を前に東野圭吾さんの原作をお読みになって、この小説が既に20年も前に書かれていたことに大変驚かれたと伺いました。実際にご出演されるにあたって、どのような想いで三島役に臨まれたのでしょうか。
本木 私の頭の中では原作と脚本がうまく混ざっていますが、この映画の物語にある緊迫感、何か「怪獣映画」のような感じで、人間が作り出してしまった怪物「ビッグB」と、それに対峙している群衆のサスペンスとして観れる面白さがあると思います。原作を読んだ時から未だに胸に引っかかているのは、「沈黙する群衆」という言葉。意思がみえない仮面をつけた沈黙する群衆という我々国民のことを指してるんですけども、自分自身も3.11のような災害を経て、それぞれに生き方や価値観の再構築をしなくてはならなかった時に、胸に歯がゆさや恥ずかしさがあり、世の中のことをすべて知り得ることはできないけれども、無知であることの罪は誰もが抱えていて、自分自身も「沈黙する群衆」の一人だったのではないかと感じ、そのメッセージの強さに引き込まれました。原作者・東野さんもおっしゃっているように、事件の真相がどうかよりも、これから未来がどうなっていくのかを描いています。三島なりの抱え続けた憤りや矛盾にできるだけ共感しながら演じられるようやりました。
──仲間さんは「トリック」シリーズから15年に渡って監督とご一緒されています。今回は全く違う役どころで、事件解決の鍵を握る重要な人物を演じられましたが、役作りにあたって、監督とはどんなお話をされたのでしょうか。
仲間 地味で影のある女性なので、台本を読みながら監督と役作りをしました。恋人である三島も昔あった出来事で抱ているものがあり、触れられたくない部分を持ったふたりなんだと思い、取り組みました。ホテルでの上質なラブシーンは演出がとても大人の雰囲気で素敵です。このような役を演じさせていただき光栄です。
──綾野さんは今回が初めての堤組となりましたが、堤監督とご一緒されての印象や、また巨大ヘリを奪う“テロの実行犯”という難しい役どころを演じられてみて、いかがでしたでしょうか。
綾野 念願でしたから、最高の現場でした。堤さんはライブ感、ストリート感、そこで起きる蜂起感を大切にする監督。ですが、そういったパワー以上に、俳優への信頼だったり、ただのライブ感ではなく、人と人を繋ぎ、記憶を記録していく演出が素晴らしかったです。
堤監督 普段、こんなに人前で褒められることがなくてドキドキしていますが、少ししか出演シーンがない中で、ステレオタイプではない犯人像の表現や発露を綾野さんは瞬発的な力で、凝縮して、出しきってくれました。
──江口さん、本木さんは本作が意外にも初共演ということですが、劇中では緊迫感のあるお二人の対峙や、光と影、動と静のような対照的なバディ感がとても印象的でした。今回初共演されて、いかがでしたでしょうか? また、現場での印象深い思い出などありましたらお聞かせください。
江口 現場ではその場の感じ方でやらせていただきました。男同士でぶつかり、徐々にブロックを積み上げていくような感覚で、よいパートナーでした。
本木 実は、江口さんとは少ししか年齢が離れていないんですよ。今年で50歳になるんですが……。
江口&綾野 えッ……50歳ですか!?
本木 そうなんですよ(笑)なので、作品の中での湯原と三島の対照の仕方がリンクしていました。江口さん演じる湯原は家族との関係で後悔して、正直に情熱を持って立ち向かう一方、同じく家族との問題をある意味陰湿で内にこもりながら異なった方法で消化していく男を演じる私。互いに持っている資質そのまま。それが自然ににじみ出て、大げさにいえば当たり役だったと思います。また、アクションシーンもあったのですが、40歳後半になると息が上がってしまって……あとこういうシーンは2、3年かなと思ってしまいました(笑)なので全身をフルに使って、タッグを組めた充実感のある共演でした。
──江口さん、本木さんとも家族を持つ父親を演じられましたが、ご自身も子を持つ父親として、この役柄をどのように演じられましたでしょうか。
江口 自分が何を伝えればいいのか、生き方を映画の中で見せたいなと。内側の部分をしっかりと演じたいと思いました。
本木 いい父親になるのは難しいと思いました。男性はどうしても仕事を優先してしまうので、子どもにいい背中をみせたいと思っても、現実的には難しいです。私もダメお父さんなところもあります。そう言えば、昨年6月に渋谷が大雨で冠水した時、江口さんが撮影の合間に素早く業者に電話して、しっかり段取りをしたので、足のきれいな奥さん(森高千里)と子どもたちが共同で水をくみ上げて一難を取り留めたそうです。その様子を横で見ていたので、元サーファーは頼りがいが違うなと思いました……(笑)
──こういった作品を今、送り出す意味とはどういうものだとお考えでしょうか。
江口 時代を感じる作品にしたいと思いました。嘘の中にある真実など、様々な内容が詰まっていますが、このように形になったのは嬉しいです。
本木 この作品で語られていることは、地球で生きていく上で、非常に大切なことだと思いました。大人は小説でも映画でもその意味を理解できますが、未来を担う子どもたちに伝えるためには映画が最適だと思います。ひとつの怪獣映画という構図で少年少女が観てくれて、その裏にあるテーマを知ってもらえたら嬉しいです。ぜひ子供たちにも観て欲しい作品です。
仲間 私自身も仮面をかぶった一人だったのではないかと感じました。これから先、生きていくために重大なテーマです。たくさんの人々に観ていただければと思います。
綾野 僕は肯定か否定かではなく、『天空の蜂』を生きて、生活していく中で大切なことを感じました。自分自身がどう生活していくのか、人が人であるために、本質的に向き合いたいと、単純かもしれないけど、こういった場で人々に向き合うことを大切にしていきたいです。改めて、この作品に参加できて心から誇りに思っています。
堤監督 “蜂に刺される”ってなんだろうと……人間というのは、社会、家族、地域だったり、集団の中で過ごすと何も考えず、考えることを放棄してしまう。そのことに対して、この犯人は警告をしています。正しいやり方ではないが、皆さんもどう感じるか、ご覧になった頂きたいです。
『天空の蜂』は、9月12日(土)より全国ロードショー。
公式サイト:www.tenkunohachi.jp
【Story】
爆薬を積んだ超巨大ヘリが原発に墜落するまで、タイムリミットは8時間。大切なものを守り抜くために――命を懸けたカウントダウンが、始まる。
1995年8月8日。最新鋭の超巨大ヘリ《ビッグB》が、突然動き出し、子供を一人乗せたまま、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止した!遠隔操縦によるハイジャックという驚愕の手口を使った犯人は〈天空の蜂〉と名乗り、“全国すべての原発の破棄”を要求。従わなければ、大量の爆発物を搭載したヘリを原子炉に墜落させると宣言する。機内の子供の父親であり《ビッグB》を開発したヘリ設計士・湯原(江口洋介)と、原子力発電所の設計士・三島(本木雅弘)は、上空に取り残された子供の救出と、日本消滅の危機を止めるべく奔走するが、政府は原発破棄を回避しようとする。燃料が尽きてヘリが墜落するまで、残された時間はたった8時間――姿の見えない敵との緊迫の攻防戦が始まった。
その頃愛知県では、《ビッグB》と原発を開発した錦重工業本社に、家宅捜索が入っていた。総務課に勤める三島の恋人・赤嶺(仲間由紀恵)は、周囲に捜査員たちが押し寄せる中、密かに恋人の無事を祈る。一方、事件現場付近で捜査にあたる刑事たちは、《ビッグB》を奪った謎の男(綾野剛)の行方を追跡。聞き込みを続けるうちに、ある意外な真相へと辿り着いていく――。
(C)2015「天空の蜂」製作委員会