岡田准一が主演を務める映画『ザ・ファブル』のプロデューサーに、「『ザ・ファブル』が必ずもう一度観たくなる!」裏話についてインタビュー。アクションシーンの裏側や、撮影現場の様子、キャスティングについてなどを深堀した。
Q:大好評のアクションシーンについて。ごみ処理場でのファブルvs複数名のバトルシーンで、「岡田さんのアクションが早すぎる!」とSNSでも話題ですが、ファブルは実際に何人倒しているのでしょうか?
A:あのバトルシーンでファブルは最大100人と闘っている、という設定です。ファブルが大勢の男たちに囲まれるシーンは、韓国映画の「新感染」をイメージしました。大勢の敵が容赦なく襲ってくる状況下で、ただ目的達成のためにひたすら闘い続けるファブルの姿を見て、そのファブルのピュアさに切なくなってほしいと、江口カン監督が岡田さんに語っていたのが印象的でした。「アクションを通してピュアさを描く」という点に、岡田さんは新しいアクションが生まれる可能性を感じたように思います。これ以外にも、アクションシーンには、単にアクションとしての凄さを描くだけでなく、様々なメッセージや、工夫が隠されています。2度目にご覧いただく場合は、ぜひ細部まで観て、味わってください。個人的には、ファブルが小島を従えながら敵を倒していくシーンで、ぎゃーぎゃーわめく小島を黙らせるために敵にわざと一発殴らせているところが大好きです。ぜひ発見してください!
Q:実はこんな小ネタが隠されている、製作陣やキャストのこだわりが反映されている、などがあれば、教えてください!
A:アキラが飼うインコのキャスティングのために10羽以上のオーディションを実施しました。その結果、ナナイロメキシコインコの「ナナちゃん」が激戦を勝ち抜きました!また、劇中に登場するアキラの動物の絵は、原作のイラストを拝借しています。ミサキの絵は、原作で「アキラの絵」を描いている方に、ミサキ役の山本美月さんに合わせて描き下ろしてもらいました。もう一つ、劇中に登場するミサキの写真集ですが、実は撮影前に丸1日かけて実際に山本美月さんのグラビア撮影を敢行して出来上がったものです。
Q:宮川大輔さん演じるジャッカル富岡のギャグ「なんで俺もやねん!」が話題ですが、岡田さん、宮川さんへの演出(振り指導)はどんな感じで行われたのでしょうか?現場ではどんな様子でしたでしょうか?
A:あのフリを作ったのは、様々な有名アーティストのMVなどを手掛ける「振付家業 air:man」さんです。
数十パターン作ってもらった中から、監督が厳選しました。岡田さんは、撮影当日に、振付ビデオを一度見ただけで、覚えていました。撮影時には、air:manさんにも立ち会っていただきましたが、指導などは全く不要でした。宮川さんにも、同じビデオを事前にお渡ししていたので、撮影時には完璧に踊れていました。宮川さんは、上半身裸で踊るので、腹が出ていた方が絶対面白いと考え、役作りとして前の日に特盛を3杯食べたと言っていました。6/22に行われた公開記念舞台挨拶でも一部披露されていましたが、ジャッカルのネタは、実は撮影はしたものの劇中で使っていない幻のネタもあります。
Q:アキラ役の岡田さん、フード役の福士さん、小島役の柳楽さん、砂川役の向井さんは、原作よりだいぶイケメンと話題です。こうしたキャスティングは意図されたものでしょうか、配役経緯を教えてください。
A:アキラに関しては、いま世界に通じる現代アクションを日本で作る上では、岡田さん以外には考えられませんでした。ただ、実際に撮影に臨んでみて、岡田さんのアクションレベルは想像をはるかに超えていました。特に、話題になっている壁をスパイダーマンのように登るシーンは驚きました。ただ登るだけでなく、何とか登れた、という感じを演技で出していただいています。同じ動きができるスタントマンは他にもいるかもしれませんが、そこにファブルとしての演技を折り込めるのは、岡田さん以外にはいないと思います。それを踏まえて、ぜひ壁登りシーンをもう一度大きなスクリーンで観てみてください。
フード役に関しては、本作におけるラスボス的存在で、主人公ファブルとのアクションシーンも一番多いキャラクターです。アクションができる俳優ということで真っ先に浮かんだのが、福士蒼汰さんです。岡田さんと福士さんは、今や日本を代表するアクション俳優であり、しかも「図書館戦争」の共演以来、今度は戦う役で共演しようという話までしていた二人です。この二人が本気でぶつかり合う姿を、ぜひ観たいと思いました。福士さんに決まったことで、江口監督のイメージも膨らみ、原作とは一味違う面白いキャラクターになっていきました。そして、このファブルとフードのバトルは、岡田さん自らがアクションを作りました。
小島役に関しては、「ディストラクション・ベイビーズ」という柳楽さん主演の映画が強烈だったので、そのイメージで小島を演じていただけたら面白いだろうと考えました。ただ、柳楽さんだからこそ、これほど救いようのない行動を繰り返す小島が、次第にチャーミングで愛おしくすら見えてくる。そこに、柳楽優弥という俳優の凄さを感じました。監督も「笑顔の破壊力」という言葉で柳楽さんの演技を絶賛しました。その言葉の意味は、本編を最後まで観ていただければ必ず分かると思います。
砂川役に関しては、とにかくサプライズを狙いました。いつもキャスティングを考える上で大事にしているのは、「この人がこの役をやるの!?」という意外性と、「見たことないけど、見てみたい!」という期待感です。そのことを今回一番意識したのが、砂川役での向井さんの起用です。監督からの、この映画で一番嫌われる役になってくださいというオーダーに、ご本人も非常に楽しみながら向き合っていただいた印象です。フリスク(のようなもの)を食べるアイデアは監督から出たものですが、それを受けて、あの独特のケースを弾く食べ方は、向井さん本人が考案しました。自分でキャスティングしておきながら、撮影初日に向井さんが作ってきた砂川のあまりのクオリティに驚愕しました。キャスティングはやはり面白い、と再認識した瞬間でした。
Q:岡田さんの「裸族」シーンについて、ご本人は「やると決めたからには脱いだ」とおっしゃっていました。役者・岡田さんの心意気にファンからもさすが!の声が挙がっていますが、いかがでしたでしょうか?
A:岡田さんにとってこれが漫画原作初挑戦です。ビジュアルがあるものを映像化することの難しさを誰よりも分かっているからこそ、今回漫画原作に挑戦するにあたって、原作ファンにも納得してもらうことを非常に意識されていました。その一つが、「裸」のシーンをきちんとやる、ということです。
Q:ファブルとボス、小島と砂川、のシーンは原作よりかなり丁寧ですが、実写化の上で気を付けられたのはどんな点ですか?
A:ファブルとボスの関係性は、脚本を作る上でかなり意識しました。原作ではまだ謎に包まれた部分が多いので、見せすぎないように気を付けながらも、二人の間の「疑似親子」の関係がお客さんに伝われば、と思っていました。原作にはない「ボスと少年ファブルの回想シーン」を入れたこともそうですし、ボスとファブル、小島と海老原という2組の関係性を写し鏡のように描くことで、その2組がそれぞれ迎える結果の違いによって、ボスとファブルの関係性が見えてくることも狙いました。
小島と砂川の対立というのも、面白い軸なので、どう決着をつけるかにこだわりました。その答えとしての最後の小島vs砂川のバトルは、ファブルとフードのプロの殺し屋同士が繰り広げられるバトルとの違いを意識し、泥臭い中学生同士のケンカを目指しました。お二人には撮影前に時間をいただき、実際に動きを練習しながら、一緒にアイデアも出していただきながら作り上げたシーンです。日本を代表する俳優、柳楽優弥と向井理がぶつかるという、映画ファン必見のシーンになりました。
映画『ザ・ファブル』は全国公開中
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