映画『人数の町』大当たり祈願・完成記念会見が24日、都内・日本橋福徳神社とキノフィルムズ試写室にて行われ、大当たり祈願には中村倫也、石橋静河、完成記念会見には荒木伸二監督も参加した。
河瀨直美監督を審査員長に迎え、2017年に発表された第1回木下グループ新人監督賞で、241本の中から準グランプリに選ばれた作品『人数の町』が9月4日(金)より新宿武蔵野館ほか全国にて公開される。主演は中村倫也。令和版「東京ラブストーリー」での赤名リカ役が話題の石橋静河、本作で映画初出演となる「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」の立花恵理、「映像研には手を出すな!」に出演中の山中聡などフレッシュな面々が顔を揃える。監督・脚本は、松本人志出演の「バイトするならタウンワーク」のCMやMVなどを多数手掛ける荒木伸二が初の長編映画に挑戦する。
会見前には、中村と石橋が浴衣姿で日本橋福徳神社を訪れ、大当たり祈願を実施。祈祷の感想について中村は「僕の邪念が全てふり払われましたので、今日はつるんとしたコメントしか出なそうです(笑)」とあいさつし、会見冒頭から会場の笑いを誘った。これに対し石橋は「楽しかったです」とニッコリ。すると中村が「どんな場所にありましたか?」と石橋からたくさんのコメントを引き出そうと質問を開始。「ビルに囲まれた神社だったけれど、昔ながらの雰囲気の良い場所でした」と付け加え、コンビネーションの良さを見せていた。
浴衣姿で登場した中村と石橋。シックなカラーの浴衣姿の中村は「数年ぶりの浴衣です。腹の座りがどこだかわからなくてちょっとそわそわしています」、爽やかな藤色にもみじをあしらった浴衣で登場した石橋は「昨年の撮影で着て以来です」と笑みを浮かべていた。これに対し、長編映画初挑戦となる荒木監督は「僕には浴衣が準備されてなかったです。着たかったです」としょんぼり。すると中村がすかさず「新人(監督)さんにはないんですね(笑)」と笑顔でツッコミを入れる場面もあった。
主人公・蒼山哲也役について、中村は「特徴もなく、流されるままに生きてきた男」と解説。続けて「主義がない男だけど、石橋さん演じるヒロイン・木村紅子やさまざまな人と出会うことで変わってどうかわっていくのかが見どころです」と述べた。対して紅子は明確な意思を持っているキャラクター。演じた石橋は「その頑固さで、“町”に馴染めずに、どこかおかしいよということを必死に訴えています。そのあとは……ね(笑)」とネタバレにならないようにキャラクター説明をしなければならない状況に、複雑な表情を浮かべる場面もあった。
映画が完成したことについて、荒木監督は「たった一人で孤独に脚本を書き始めるところから始まりました。それが今、日本で最高レベルのお二方に演じてもらうことで立体化したことに感動しています。撮影中は、リハーサルの段階から、うれしくて涙が溢れそうになるのを必死に抑えて、ベテラン監督のように堂々と振る舞うように心がけていました」とコメント。
すると、中村が「堂々とした印象はなかったです」と記者たちに暴露し、笑いを誘っていた。映画の着想について、荒木監督は「子供の頃から、人間そのものというより、人間が塊になると怖いというイメージがありました。多数決とかって怖いなと感じていたんです。スピルバーグ監督が『怖いものがあれば映画になる』と言っていたのを聞いて、『これだ!』と思ったのがきっかけです」と明かした。
舞台となる“町”は、ちょっとした労働のようなことをやれば衣食住が保証されるという不思議な場所。そんな“町”の印象について、中村は「場所、空間、表情、言葉遣いなど、ひとつひとつがなんか異様でしたし、違和感はぬぐえませんでした。でも考え方を変えて、頭を切り替えれば居心地が良かったりするのかなという感覚でいました」と振り返る。石橋は「紅子は町に入って行く側の人。ひたすら怖いし、気持ち悪いし、不気味で嫌な場所だと思っていました」とコメントした。
注目してほしいポイントについて、中村は「石橋さんの……」としばらくためてから「瞳です」とアピール。その理由は「本当にキレイな瞳なんです。こんなに光が集まる眼球、僕、持ってないですもん」と独特の表現で石橋の瞳の美しさを解説。続けて「紅子の登場で物語が動き、青山も揺さぶられて行く。それが成長なのかどうかわからないけれど、変わるきっかけとなる紅子の登場は見どころですね」と強調した。石橋は大きな意味があるシーンではないと前置きしながら「逃避行して海辺でけだるそうに過ごす二人のシーンがすごく好きです」と告白。
「二人が大変な生活をしている様子がよくわかるシーンです」と説明していた。荒木監督は「僕の映画作りの狙いは、画面の中でいろんなものがいっぺんに動いていること。つまり、絶対ここを見て!という注目ポイントを作らないことを心がけました」と映画作りのこだわりを明かしていた。
映画の楽しみ方について中村が「映画や作品は、観る人のコンディションが影響するものだと思っています。自由に受け取ってもらえたら本望です」と語ると、石橋も「私自身、1回目と2回目の感想は違いました。そういう効果のある作品だと思うので、自由に観ていただければうれしいです」と笑顔を浮かべていた。
ここからは質問タイムへ。記者からの質問で初共演の印象について聞かれた中村は「初めてとは思えないくらいの信頼感と安心感がありました」としながらも「僕が一方的に思っているだけかもしれないけど……」と付け加え、いたずらっぽく微笑む。続けて「現場でも仕事の話はせずに僕がずっと喋っているところに、石橋さんがツッコミを入れ、それにまた乗っかって……、そしてだんだん無視されます」とコメント。「でも、無視されると仲良くなったと思えるタイプなので大丈夫です(笑)」と満足の表情を浮かべていた。
「中村さんと石橋さんは水と火という真逆のタイプだと思いました。さらさらっと流れるように演じる中村さんと、圧力でグッグッ押してくる石橋さんという感じですね」と二人の印象を語る荒木監督のコメントに「圧が強い女優って言われているよ」と中村がツッコミを入れると、石橋は「なんか嫌だなぁ」と苦い表情を浮かべ、荒木監督がすかさず「タイプが違いすぎると思ったけど、二人揃ったらピタッとハマったのですごくうれしかったです」とフォローする場面もあった。
会見前「大当たり祈願」に絡めて、人生の大当たりについて聞かれた中村は「小学校のときに懸賞で当たったE賞」と大当たりではないエピソードを披露。それには理由があり「大人になると、子どもの頃の残念な話が回収できて、当たったなって思えるのがいい」と解説。すると、石橋も「私は小学生の学芸会で、一番やりたくなかった豚のお母さん役をやったことです。今こうして話せるので大当たりなのかもだけど、すごくショックでしたね。早く終わらないかなと思いながら演じていたのを覚えています」と振り返った。
最後の挨拶で荒木監督は「お気を確かに持ってご覧ください」と呼びかけ会場の笑いを誘う。石橋は「おもしろい作品になっているので、映画館に足を運んで観ていただければうれしいです」とニッコリ。中村は「映画を観た方の反応が楽しみな作品なので、早く皆さんの感想が聞きたいです」とアピールし、会見は幕を閉じた。
映画『人数の町』は9月4日(金)より全国公開
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