『私をくいとめて』宇垣美里、悩んだときは“脳内会議”で解決 主人公に共感「愛おしくて仕方がなかった」

恋愛発酵学会”Presents『私をくいとめて』公開直前上映会が実施。スペシャルゲストに宇垣美里、牛窪恵、大九明子監督らを迎え、トークイベントが行われた。

高校在学中の2001年「インストール」で第38回文藝賞を受賞しデビュー後、芥川賞、大江健三郎賞など数々の賞を受賞してきた綿矢りさ原作の小説「私をくいとめて」。『勝手にふるえてろ』などで知られる大九明子監督が映画化。おひとりさまヒロイン・みつ子役にのん、みつ子が恋する腹ペコな年下男子・多田くん役に林遣都、結婚しイタリアで暮らすみつ子の親友=皐月役に、のんとは朝ドラ以来の共演となる橋本愛が扮する。共演に臼田あさ美、片桐はいり、若林拓也、前野朋哉、山田真歩らが名を連ねる。

みつ子と多田くんがゆっくりと恋を通わせていく“恋愛”の過程が、マルコメの糀甘酒作りに欠かせない“発酵”のプロセスとよく似ているところから、“発酵”の視点から“恋愛”を研究&応援するプロジェクトとして始動した「恋愛発酵学会」。そんな同プロジェクトによる上映会が実施、スペシャルゲストとしてフリーアナウンサーの宇垣美里、世代・トレンド評論家の牛窪恵、大九明子監督が招かれた。

まずは宇垣、牛窪へ本作を観た感想について聞かれると、宇垣は「ずっと、“みつ子、わかるよわかるよ~”という気持ちで観ていました。おひとりさまの、楽しくて自由で、だけどさみしさもあって…という感じがすごく映画からも伝わってきました。他人と付き合うことで生まれる自分というものにパニックになってしまうみつ子が愛おしくて、可愛くて仕方なかったですね。そのままの自分でいいんだよ、と背中を押してもらえましたし、誰かと一緒に生きるのはいいなと改めて思いました」とコメントし、同世代のみつ子に重ね合わせながら観ていたという。

一方で牛窪も「私が『男が知らない「おひとりさま」マーケット』を発表したのは2004年。その後、流行語にもなりましたが、あの頃は旅館に女性一人で宿泊する、というだけで心配されたり怪しまれたりして、泊まれなかったりしたんですよね。あれから16年経って、みつ子みたいな女性が多くなったのは良かったなと思います」と専門家目線でコメントしつつ、映画についても「焼き肉屋へ行ったり、おひとりさまを楽しみながらも、ふとした瞬間に寂しさを感じさせるディテールがとにかく細かくて、素晴らしかったですね!私生活を覗き見されているような気分になりそうなくらいリアルでした」と絶賛していた。

ふたりの感想を聞き、監督も「勉強になります」と謙遜しながらも、「自分も一人旅をしたり、おひとりさまを謳歌している人間のひとりだったので、実体験や綿矢さんの原作を読んで溢れた想いを込められているかなと思います」と振り返っていた。

本作で共感したポイントについて問われると、みつ子と同世代の宇垣は、「たくさんありました!」と即答。「ひとりで行動する楽さだったり、朝家を掃除した後にだらーっとする楽しい時間とか。満たされているけれど、なんとなく足りないような気持ちになるのもすごく共感できて…。そういうとき、頭の中の自分と会話してその隙間を埋めたりすることもあるよねって思いました。私の脳内には、迷ったときに“やれやれー!”って発破をかけてくれるようなひとがいます(笑)人それぞれいろんなタイプの相談役が心の中にいるんだろうなと思いますね」と本作の“わかりみ深い”魅力を語りつくしていた。

そんな31歳・みつ子を描くうえで、監督は「みつ子と同じくらいの年に経験した想いや気持ち」を大事にしたといい、「私は29~30歳くらいの頃がとても恐ろしくて。何も成し遂げないまま朽ち果ててしまうということが耐えられなくて、アルバイトで稼いだお金を全部ヨーロッパ旅行に注ぎ込んだりしたこともありました。でも、大暴れした割には、30歳になってしまうと意外と悪くなかったんですよね。いろんなものがみえて楽しくなりましたし、元々ひとりが大好きだったことを気づいて、どんどん謳歌していいなと思えた年でしたね」と当時を振り返る。

一方で、おひとりさま事情に詳しい牛窪は、「20代なら自分を可愛く見せたりすることもありますが、30代になると、そうしている自分をちょっと恥ずかしく思ってしまう葛藤をもった女性っていますよね。“あざとかわいい”になれないみつ子世代の女性は、“ひとりでちゃんと生きれるぞ”と自分に言い聞かせているみつ子に共感できるんじゃないのかなと」と分析し、(本作の)共感性が高い理由を独自の視点で語っていた。

さらにイベントでは、恋愛発酵学会が雑誌「anan」と共同で、全国の25歳~35歳の女性300人を対象に実施したアンケートの調査結果『発酵恋愛白書』をもとにクロストークを展開。

調査では、時間や手間をかけながら、相手を見つめたいと思う“発酵恋愛”を支持する女性が多数みられる結果に。さらに結果では、約6割の女性が「3か月」以上時間をかけながら、ふたりの温度感・価値観をチェックしたいと回答。相手を知るために一緒に行いたいこととしては、「一緒にご飯を食べること」が一位に上げられた。本作でも、みつ子と多田くんが「家がご近所同士」というのをきっかけに食事をするまで1年以上歳月をかけており、まさに“発酵恋愛”で恋を育んでいる。

その結果に牛窪は、「結果を見るかぎり、失敗したくなかったり、性格や価値観を重視している方が多いですよね。年収やルックスなどのスペックを重視する時代もありましたが、性格や価値観をすり合わせるためには、相手と向き合わなきゃいけないですよね。バブル時代の派手なデートとは違って、生活に根差したところで自分に合う人を見つけて、発酵力を発揮したいという方が多いんじゃないでしょうか」と分析。

宇垣も「結婚したいなと思っても、今後この人とどれだけ一緒にご飯を食べるかと考えると、それが苦になってしまったら生活そのものが辛くなりそうですよね。食欲って一番最初の欲だから“この人と一緒に食べたい”と思わせるような相手がいいんじゃないかなと思います」と結婚に対する価値観を明かしていた。さらに監督も「最近の若い方は堅実で、慎重ですよね。いろんなことに苦しんでいるからかわいそうだなと思います(笑)年を取ると、いろんなことが楽になるから良いですよ。若いって大変だなと思います(笑)」としみじみ語り、場内の笑いを誘っていた。

さらに『発酵恋愛白書』では、恋愛の悩み相談相手は「友達」が5割の一方で、「自分自身に問いかける」おひとりさま女性も3割という結果が。本作でもみつ子が脳内に生み出した相談役“A”に対して、多田くんとの関係性について悩みを打ち明ける姿も描かれている。

この結果に、宇垣は「友達に相談したとしても、自分はひとりでしかないので、脳内で自問自答する人は多そうですよね。私はわりと“脳内会議”を開いて、頭の中でどうすべきか整理して解決するようにしています。脳内会議の声がついつい外に出てしまって妹には“こっちに話しかけるか喋らないか、どっちかにして!”って怒られるときもありますが(笑)でも、そういうことしている女性は多いんじゃないかなと思います」とコメント。

一方で監督も「(脳内相談役は)いたらいいなって思いますよね。私も独り言いいながら脳内で整理していくことはたくさんあります。独り言を口に出してしまっていることもあるみたいで、撮影中にのんさんにも“独り言喋ってましたよ”と言われたこともありました(笑)」と同意してみせていた。そんなふたりの言葉に、牛窪は「独り言をいうのって、いいことなんですよね。ひとりでカフェに入ったときもスマホを触るんじゃなくて、独り言をつぶやきながらでもいいから、自分自身のことを考える時間を作って、内面と向き合うようにすると効果的なんですよ」とコメントしていた。

最後は、映画を楽しみに待つファンに向け、「たくさん笑えて、ぐさっと心に刺さる部分もたくさんあって…、見終えた後、明日からまた頑張って生きていこうと背中を押してもらえるような作品です。人と人との距離を取らなきゃいけないこの時代だからこそ、人と生きていくことの素晴らしさを改めて感じさせる作品にもなっていると思うので、ぜひたくさんの方にご覧いただけたら」(宇垣)、「女性はもちろん、ぜひ男性にも観ていただきたい映画です!女性側の微妙な立ち位置というのもリアルに描かれているので、男性が見たら女性が考えていることが少し理解できる気がしますし、女性の気持ちを受け取ってもらえるんじゃないかなと思います」(牛窪)、「振り返ってみると、私の作品は“瞬発力”というよりは、まさに“発酵”するように、長くじわじわと観る人の心に届けばいいなと思いながら描いてきました。この映画が“今の自分には少し眩しいな”と感じられたとしても、私はまさにそういう人たちに届けたいと思いながら描いているので、ぜひ映画館でひっそりと発酵するように楽しんでいただけたら嬉しいです」(監督)とそれぞれメッセージを贈り、イベントが締めくくられた。

映画『私をくいとめて』は12月18日(金)より全国公開

(C)2020「私をくいとめて」製作委員会

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作品情報

私をくいとめて

私をくいとめて

4.0
2020/12/18(金) 公開
出演
のん/林遣都/臼田あさ美/若林拓也/片桐はいり/橋本愛 ほか
監督
大九明子