公開中の劇場オリジナルアニメーション『サイダーのように言葉が湧き上がる』。8⽉3⽇(⽕)新宿ピカデリーにてイシグロキョウヘイ監督のスペシャルトークイベントが⾏われた。
9ヶ⽉に渡り、本作の宣伝のためYouTubeチャンネル「サイコトちゃんねる」を⽴ち上げ、制作エピソードなどを丁寧に語ってきたイシグロ監督。公開まで全29回がアップされているが、今回のイベントは「出張版」として語りきれなかったエピソードやTwitterなどで募集した質問に監督⾃らが応える形式で⾏われた。
神⾕浩史、坂本真綾、梅原裕⼀郎、潘めぐみら今をときめく⼈気声優たちが参加しているが「神⾕さんお⽗さん役だって気付きましたか?多分⾔われなかったら気づかないくらい馴染んでたと思うんですが、僕神⾕さんと初めて仕事したのはテレビシリーズの「クジラの⼦らは砂上に歌う」という作品で、シュアンというキャラクターを演じていただいたのですが、印象深かったのはアフレコの最初の⽇に結構突っ込んだところまでキャラクターの質問をしてくれまして。そこまで聞いてくれる⼈ってあまりいないんですよ。あれほど⼈気な⽅でもこういうふうに聞いてくる、理解しようとするんだという姿勢に感銘を受けたんです。シュアンは、影がありつつ飄々としているようなキャラクターなんですけど、テストのパターンは⽣々しすぎてNGにしているので放送にはのってません。ただ、普段の神⾕さんから完全にスイッチが切り替わってて。絵であるはずのキャラクターがその場にいるような芝居をされていて、かなり度肝を抜かれたんですよね。そのときに“もしかしたら地に⾜がついたキャラクターを神⾕さんはやってみたいんじゃないかな”と勝⼿に想像したんです。そういうところも踏まえて、今回チェリーのお⽗さん役をオファーさせていただきました。僕、サイコトのアフレコ中はブースの中に⼊ってディレクションさせていただいていたんですが、喉を潰しちゃいまして。声優界では有名らしい、喉に優しいゼリーみたいなものを神⾕さんがスッと差し出してくれたのが⼀番の思い出です」
「坂本真綾さんは実はお話作りのスタッフとして呼ぶつもりだったんですよ、役者じゃなくて。劇中ラストあたりに流れる⼤貫妙⼦さんの「YAMAZAKURA」がありますよね。副案として実は真綾さんが歌うっていうのも考えていました。⼤貫さんに曲を作ってもらえるとも思っていなかったし、⼤貫さんが歌ってくれるとも思っていなかったので。僕の中での満点回答としては、⼤貫さんが作詞作曲して歌ってくれることで、結果的にそれは実現したのでよかったんですが、曲は作れるけど歌うのは難しいかもと⾔われたときに、僕は真綾さんを出すつもりだったんですよ。実は⼤貫さんが真綾さんに曲を提供していたりする繋がりもあって、そして彼⼥は素晴らしいミュージシャン・シンガーでもありますので。今となっては僕としてはベストではあるんですが、真綾さんが歌うバージョンも聴いてみたいので、どこかでカバーとかやってくれないかな(笑)お芝居についてはもう100点満点なんで⾔うことなしでございます!」
「梅原裕⼀郎くんにはタフボーイというキャラクターを演じてもらいました。梅原くんも神⾕さんと同じく「クジラの⼦らは砂上に歌う」で初めてお仕事したんですが、彼はオーディションでオウニという役を獲得したんですけど・・・梅原くんの⾒た⽬知ってますか?みなさん。びっくりするくらいイケメンですよ。イケメンだしかっこいい声なんですよ。ただ休憩中とか話していて思ったのは、イケメン感が全然なくてフラットな感じなんですよね。神⾕さんとは違うベクトルで梅ちゃんのあの⾒た⽬とあの声で演じる役もイケメンが多いんですよ。僕は普段のフランクな感じの梅ちゃんをみてて、⾒た⽬に引っ張られないような⾯⽩い役を梅ちゃんにお願いしたら良くなるんじゃないかなと思いつつ、同時にタフボーイイケメン化計画が僕の中でありまして。⾒た⽬もちょっとヤンキーっぽいので愛されキャラになって欲しいなと思ったんですよ。だから声を梅ちゃん的イケメンボイスにして、しかも普段あんなコミカルだったり怒ったりイキったりする芝居をしない⼈にやってもらったら愛嬌が出ていいのかなと思って演じてもらいました。最後の⽅笑いながら「どっちだよ」というセリフがあるんですけど、すごく拘りながらディレクションをしまして。⾃分で「こんな感じだよ」とやりながら3、4回撮り直してもらったんですけど、最後まで付き合ってくれました(笑)」
「潘めぐみさんは今回初めて⼀緒にお仕事をしたんですが、今までの作品で何度かオーディションには参加していただいていたんです。スナックワールドのチャップっていう少年を潘さんが演じていることを知らずにテレビで⾒ていて。少年ボイスなんですけど⾮常に可愛げがあって愛嬌があるいいお芝居してるなと思って、最後にテロップ確認したら潘さんって書いてあって。『この世界の⽚隅に』では遊⼥の役、「俺物語!!」ではヒロインの可愛い⼥の⼦と、カメレオン⼥優ですよね。それを知った上であの少年ボイスを聞いてたので、⾃分の作品で少年が出てきて、悪ガキなんだけど愛嬌を植え付けられるキャラがあったらお願いしたいと思っていて、今回ビーバーくんをやっていただきました。⾮常によかったです。元気もいいし、たまに可愛げがあるような芝居をしてくれて、⾮常に嬉しかったです。最初のドタバタ劇の中で「元プリィ!?」っていうんですが、アフレコ中に笑そうになってしまって。危うく僕の笑い声が⼊ってNGになりそうになったくらいツボでした。あそこはすごく好きです。」
また、Twitterで寄せられた質問では 「(⼀番こだわったシーンは?)⼀番最後の俳句ラップのシーンです。あそこがやりたいからこそこの映画を作ったとも⾔えるので。さらにいうとそのシーン、⾃分で演じて撮影してるんです。デモテープを1回⾃分で作って⼤貫さんのデモに重ねて⾃分でラップして、それを染五郎くんに聞いてもらって、演じてもらってるんです。それくらいの苦労を重ねて作ったシーンですのであそこが⼀番こだわったシーンですね。ただねぇ・・・⾃分で⾒返すとキツイです、⾃分なんで(笑)」
「(背景の⾊が特徴的で⾊が濃いと感じた、その狙いは?)⾊が濃いの答えにはならないかもしれないですが、この作品をハッピーエンドで終わらせるつもりでした。そこから逆算していくとビジュアルも⾳楽もポジティブな印象を与えるということが重要なんですよ。あと⾃分の趣味も兼ねてですけど80年代のシティポップアート調にしたりもあるんですけど、“ポップにした”という狙いはあります。⾊の勉強をされている⽅がいらしたら、パッケージが発売されたり配信が始まったらRBG値を取ってもらいたいですね。実は⽇本の⾊で構成しているので、彩度が⾼いわけじゃないんですよ。彩度⾼く明るく跳ねて⾒えるのは、差し⾊がそうさせてる。空の⾊とか結構彩度低いんですよ。組み合わせで明るく⾒えるという。この辺は⾯⽩いところがあります」
「(英訳含め海外を意識した?)僕英語喋れないので全くノータッチなので英訳については翻訳家の⽅が頑張ってくださいました。この映画は最終的に海外で配給することも決まってましたので、意識はしたんですが作りに関しては完全にドメスティックです。⽇本の⽂化に根ざしたものを作れば海外に響くという実感が今までの経験の中であったんですよ。変に各国でのローカライズみたいなものを意識せず完全に⽇本の⽂化に根ざして作りました。これが僕の中で正解だと思っています。」
また、今回は観客と監督とのQ&Aでは「Q.劇中登場するレコードは⼀般の流通には流れた設定?」「A.流通には載ってないつもりで考えました。プライベート版として作った設定」「Q.パンフレットを買おうとしたら劇中登場するピクチャーレコードを模したもので感動した!誰の発案?パンフレットを⾒た時の監督の感想は?」「A.ロゴデザイン含めて書籍などやってくれている盟友の名和⽥耕平さん。彼がデザインしてくれるならすごいものになるのは分かっているので何も⾔ってない。実際にテスト印刷されたものが送られてきたら「ウワー!ホンモノ!?」って思って。だからあのパンフレットに関してはファン⽬線みたいな感じで触れることができましたね。」など、さらにコアな視点からの質問や回答が繰り広げられた。
このイベントは40分間と決まっていたが、監督が最後の挨拶をする頃にはすでに2分前に。「(タイムキープは) バッチリ!」と9ヶ⽉にわたるYoutuberチャレンジで鍛えたホスト⼒で公開番組をやり切ったイシグロ監督だった。 海外での反響もさらに⼤きくなっており、「愛らしい夏のラブストーリー」「デジタル世界における若者のコミュニ ケーション形態の進化を観察するロマンチックな時代の到来を私たちに与えてくれる」などレビューが相次ぎ、イシグロ監督が意図した「ドメスティックな、完全に⽇本の⽂化に根ざした作品」がもたらす感動とエモーションはどんどん世界に広がり続けている。
映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は全国公開中
(C)2020フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会