第22回釜山国際映画祭にて、映画『羊の木』が本年度より新設されたキム・ジソク賞を受賞した。
キム・ジソク賞は、アジア映画の窓部門に選ばれた56作品の中から10タイトルがノミネートされ、その10作品から2作品が選出。10月21日(土)に行われたクロージングセレモニーと授賞式に吉田大八監督が出席した。吉田監督はトロフィーを受け取り「僕は今年初めてこの映画祭に来たので、残念ながらキム・ジソク氏とは会ったことも、もちろん直接お話したこともありません。しかし、彼を知る人たちからの話や、この素晴らしい映画祭の盛り上がりを通じて確かに彼を感じることができます。この賞、そしてこの映画祭に関わる全ての皆さんに感謝します」と英語でスピーチ。最後には「カムサハムニダ」と韓国語で挨拶した。
審査員である、トニー・レインズ氏は「とにかく素晴らしい映画だった」、ダーシー・パケット氏は「キャラクターが魅力的で、導入から一気に引き込まれた。人間の闇とそうでないものが、日常の中でよく描かれ、またバランスがとても良い。テーマも興味深く、それを語るストーリーテリングも良かった」とコメント。
「今年の多くのジソク賞候補作品が、日常の中の社会的相互作用の表面、そしてその下に置かれた暴力性をあつかっていますが、『羊の木』には特別な美妙感と独創性が目立ちました。この映画は、もっともらしく見えるが実際には不条理な社会的実験を自ら行っている平和に見える漁村を切り取り、効果的な演出で描いていきます。『羊の木』は俳優たちの素晴らしい演技、良く練られた脚本、そしてたちまち観客を映画に引き込む力が目を引く作品です」と映画祭HPより受賞理由が公表された。
受賞後のインタビューで吉田監督は「釜山国際映画祭には始めてきましたが、最初の機会でこんな大きな賞を頂き、本当にラッキーだなと思っています」と改めて喜びを言葉に。今後の展望を聞かれると、「しばらくは『羊の木』の公開に向けて、宣伝活動を頑張って行きたいと考えていますが、この2年間くらい映画2本と舞台をやって忙しかったので、しばらくちょっと充電しながら次やる事をゆっくり考えたいと思っています。せっかくこんな大きな賞を頂いたので、この賞の第一回受賞者に恥じないような映画をこれからも作っていきたいと思います」と語った。
本作は、殺人などの凶悪犯罪に手を染めた元受刑者たちを受入れた港町で起こる数々の事件、住民と元受刑者の不協和音、そして人間が本能的に犯罪者に感じる生理感覚を描き出す問題作。山上たつひこ×いがらしみきおがタッグを組んだ原作は2014年文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した。吉田大八監督が「普通の人の輪に入り込む異物」という極限の設定と、その異物が元殺人犯であるというセンセーショナルなテーマを軸に、原作を大胆にアレンジ。全く異なる新しいエンディングを創り出す。
主人公のお人好しな市役所職員・月末一を吉田組初参加となる錦戸亮が演じ、共演に、町に帰郷した月末の同級生・文(あや)を木村文乃、傲慢ですぐ人に絡む釣り船屋・杉山勝志役に北村一輝、色っぽく隙のある介護士・太田理江子役に優香、人見知りで几帳面すぎる清掃員・栗本清美役に市川実日子、大人しく気弱な理髪師・福元宏喜役に水澤紳吾、強面で寡黙なクリーニング屋・大野克美役に田中泯、無邪気で好奇心旺盛な宅配業者・宮腰一郎役に松田龍平が扮する。
映画『羊の木』は2018年2月3日(土)より全国公開
【CREDIT】
出演:錦戸亮 木村文乃 北村一輝 優香 市川実日子 水澤紳吾 田中泯 / 松田龍平
監督:吉田大八 脚本:香川まさひと
原作:山上たつひこ いがらしみきお 「羊の木」(講談社イブニングKC刊)
製作:アスミック・エース 配給:アスミック・エース
公式サイト:hitsujinoki-movie.com
©2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ いがらしみきお/講談社