映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の記者会見が30日、都内・赤坂プリンスホテルクラシックハウスにて行われ、ギレルモ・デル・トロ監督と菊地凛子が登壇した。
たくさんの報道陣の前に姿を現したギレルモ監督。親日家としても有名な彼は「私のとても好きな映画を日本に持ってこれて嬉しい。日本は私の太ったハートと近いんです」とユーモアを交えて挨拶した。
『シェイプ・オブ・ウォーター』はおとぎ話
1962年のアメリカ×ソビエト冷戦時代を舞台に、
また、1962年という設定について「当時のアメリカは偉大な国であると同時にテレビが登場したことで映画が衰退した年でもあります。そして同じく映画が衰退していく現代において、この映画は、私の『映画に対する愛』を描いています」と笑顔で、力強く語り報道陣を頷かせた。
オスカーノミネートのサリー・ホーキンス、キャスティング秘話
キャスティングについて聞かれるとギレルモ監督は「サリー・ホーキンス(主人公・イライザ役)は当て書きでした。サリーを初めて見たのは『サブマリン』で、彼女はほとんどセリフがないほど脇役でしたが目が話せなくなったんです。良い役者はうまくセリフを話すことだと言われがちですが、僕はそうは思いません。1番優秀な役者とはよく聞き、よく見る人だと思います。彼女のように」とサリー・ホーキンスを絶賛。
続けてサリーへのオファー時を「最初に『君は口がきけない役なんだ。でも1回独白があるし、歌と踊りもある、さらにクリーチャーと恋に落ちるよ』と話したんだ。すると彼女は一言『グレート』って。完璧だったよ」と満面の笑みで振り返った。
また、不思議な生きもの(クリーチャー)を演じたダグ・ジョーンズについて「日本には『文楽』という芸術があって、最高の文楽俳優は人形を操るのでなく、それになってしまう。ダグも同じで、あのスーツを着るとクリーチャーになってしまうんだ。どれだけ装置やカメラ、衣装がすごくてもダグが心からクリーチャーでなければ、そして美しい川の神でなければ、さらに、サリーの彼への愛が本当でなければこの映画は成立しなかったんだ」と述べキャスト陣への厚い信頼が伺えた。
ギレルモ・デル・トロ監督の本作へのこだわり
そんな本作のことをギレルモ監督は「ラブソングのようなイメージと音でシンフォニーを奏でている。よく車を運転しているとすごく良いラブソングが掛かって一気にボリュームを上げて一緒に歌うようにね。そんな感じ。クラシカルな映画のや黄金時代のハリウッドみたいにね。でもちょっとクレイジーだけどね」と微笑み、報道陣の笑いを誘った。
またポスターにも使用された印象的なブルーについて「色はすごく厳密に計算されている。まず、サリーのアパートの家は青。常に水中の色なんだ。アパートの壁紙は魚の鱗状で、これは北斎が描いた大きな鯉から影響を受けた。サリー以外のキャラクターの家は暖色。赤は愛と映画を表す時に使った。だから愛と交わったあとのサリーは赤い服を着始めるんだよ。さらに緑は未来の意味がある。車やゼリー、パイ、キャンディー、研究所も未来を示す緑色をしているんだよ」と制作秘話を披露した。
劇中歌については「とても泣ける歌なんだ。イライザはどれだけクリーチャーを愛してるかを、本当に伝えたいけど、声が出ないんだ。メキシコ(ギレルモ監督の母国)では愛を伝える1番の方法はセレナーデと言って、バルコニーの下から歌うんだけど、僕は彼女に、彼に対する想いを歌い上げて欲しかったんだ。セリフは嘘をつくことができる。だからこそ言葉を発せない2人が1番つながりを持てると思うし、歌では嘘がつけないと思う」と語った。
先日発表されたアカデミー賞ノミネートでは、本年度最多の13ノミネートを果たした本作。そのことについてギレルモ監督は「『パンスラビリンス』も『シェイプ・オブ・ウォーター』も非常に自分を表現した作品だから、そういう作品が認められることはすごく嬉しい。こう言った物語の詩の力強さを私は信じているし、ファンタジーでしか表現できない美しさがあると思う」と話した。
また「これは偉大な巨匠の作品ではない。『市民ケーン』みたいにものすごく重要とされる映画とは違う。でも人生でどん底まで落ち込んだ時に、こういうあまり重要とされていない喜劇やメロドラマやミュージカルで少し元気をもらえることがある。そういう映画にこそ私はすごく愛を持っているし、映画と意図が繋がっている。非常にエモーショナルな部分を持っていると思うんだよ」と続け、映画への愛を垣間見ることができた。
ギレルモ・デル・トロ監督×菊地凛子
さらに特別ゲストとして映画『パシフィック・リム』に出演した菊地凛子が登場。一足先に本作を鑑賞した菊池は「本当に美しかったです。究極のラブストーリーで、監督の愛情が細部まで行き渡っていました」と感想を述べた。
また『パシフィック・リム』の撮影当時を振り返って「監督は説得力を持って演出したり、指示したりします。でもそれにみんなが従うっていうのは、監督の愛情深さと信頼だと思います。私もはじめ『危ないからスタントがやる』と聞いていた、タンクプールに飛び込むカットで、急に監督に『飛び込んで』って言われて驚いて。でも、監督に出来ないなんて絶対に言えないので、飛び込みました。一発オッケーをもらって嬉しかったですね。出来ないなんて絶対言えないだけじゃなく、やる気にさせてくれる。そんな方です」と語った。
それを受けてギレルモ監督は「僕も飛び込んだよ」とお茶目に、ごめんねと微笑んだ。そんなギレルモ監督は菊池について「彼女がいるから『パシフィック・リム』を作ったんだ。私の中で彼女は主人公だよ」と語り、2人の信頼関係が伺えた。
最後に監督は来ていたジャケットを引っ張りながら「日本についてお煎餅やおまんじゅう、しゃぶしゃぶを食べたらジャケットが閉まらなくなっちゃったんだ。日本についた時は閉まってたんだよ」とお茶目な一面を見せ、本作については「メキシコの兄弟を助けると思って、ぜひ観てください」とコメントを寄せた。
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は3月1日(木)より全国公開
【CREDIT】
監督・脚本・プロデューサー:ギレルモ・デル・トロ
出演:サリー・ホーキンス、マイケル・
配給:20世紀フォックス映画
(C)2017 Twentieth Century Fox