幅広い役を演じきる実力派俳優ジェイク・ギレンホール【監督・俳優のすすめ Vol.9】

“監督で観る” “俳優で観る”映画の楽しみ方。今注目の人やこれから注目すべき映画監督・俳優について紹介する【監督・俳優のすすめ】。Vol.9は11歳のデビューから着実にキャリアを積み上げてきた実力派俳優ジェイク・ギレンホール。

Keyword 1:芸能一家の子役から一躍ハリウッド注目の若手俳優に

若くしてハリウッドの新星として注目を浴びたジェイク・ギレンホール。父は映画監督、母はプロデューサー兼脚本家という家に生まれ、姉のマギー・ギレンホールも女優として高く評価されている。初めて映画に出演したのは11歳の時、ビリー・クリスタルの息子役。その後も父親が監督を務める映画などへの出演を重ねるが、俳優としての評価を一気に高めたのは映画初主演作『遠い空の向こうに』(99)。炭鉱の町が舞台の本作で、炭鉱夫としての将来を期待する父と、ロケットを作る夢との間で悩み、葛藤し、父と衝突する青年の内面を見事に表現している。撮影当時17歳だったジェイクは、父親役を演じるオスカー俳優クリス・クーパーとの緊張感ある共演シーンでも堂々とした演技を見せている。そして、作品としてもカルト的人気を誇る『ドニー・ダーコ』(01)では、前作の夢を追う青年とは正反対とも言える、夢遊病にかかりカウンセリングを受ける不安定な高校生役で再び主演を務め、インディペンデント・スピリット賞主演男優賞にノミネートされた。この2作により、ハリウッドで若手俳優として評価され、一躍注目を浴びる存在となった。

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Keyword 2:どんな役も幅広くこなす“カメレオン俳優”

ジェイク・ギレンホールといえば──どんなキャラクター・役柄を思い浮かべるだろうか。
保守的な時代背景とストーリーが話題を呼んだ『ブロークバック・マウンテン』(05)では、過酷な労働を共にした青年と精神的にも肉体的にも強い絆で結ばれる難しい役どころを演じ、『ジャーヘッド』(05)では過酷な訓練を受け戦場へ派遣される狙撃手、実在の連続殺人事件を映画化した『ゾディアック』(07)では家庭を省みず事件にのめり込んでいく風刺漫画家、『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(10)では父王殺しの真相を解くため冒険に出る王子というヒーロー役を、『ラブ&ドラッグ』(10)ではプレイボーイでお調子者の“バイアグラ”のイケメン・セールスマン、『エンド・オブ・ウォッチ』(12)ではロサンゼルスで常に死と隣り合わせの日常を送るパトロール警官役、一人二役を演じた『複製された男』では偶然自分と瓜二つの俳優の存在を知ったことから運命が狂ってしまう大学講師と俳優…。誰もが名前を挙げる代表的なキャラクターや役のイメージを持つような俳優とは違い、映画の中でその世界の人物に成りきる。それも多彩な役柄を演じきる実力があってこそ。どんな役であってもジェイク・ギレンホールが演じる人物・キャラクターそのものが“そこにいる”という感覚を与える、まさにカメレオン俳優だ。

 

ジェイク・ギレンホールは舞台でも活躍しており、初舞台は2002年、ケネス・ローナガンのリバイバル「This Is Our Youth」。ロンドンのウェスト・エンドで8週間上演され、成功を収めた。2014年には劇作家ニック・ペインの戯曲を舞台化した「Constellations(星ノ数ホド)」でブロードウェイ進出を果たしたほか、今年7月始めには3公演限定で、“B級映画の帝王”ロジャー・コーマン監督の1960年のカルト映画をブロードウェイでミュージカル舞台化した「Little Shop of Horrors」に出演。ハリウッド・リポーターの批評家はジェイクの歌声について“甘美で、表情豊かに音を奏でている”と評し、ニューヨーク・タイムズは“明らかに舞台スターになる運命の、数少ない映画スターのひとり”と最高の賛辞を贈るなど、舞台での演技も絶賛されている。また、2012年の『エンド・オブ・ウォッチ』以降はプロデューサー業も務めたりと、その活躍の場を演技以外にも広げている。

Keyword 3:驚異の役作りで挑んだ最新作

これまでも幅広い演技で観客を魅了してきたジェイク・ギレンホールだが、最新作ではその肉体改造が話題となり周囲を驚かせた。8月22日(土)より公開中の『ナイトクローラー』では、約12キロも減量して頬のこけたガリガリのカメラマンに扮しかたと思えば、その次に撮影が行われた『Southpaw』(2016年日本公開予定)では、再起をかけて闘うボクサーを演じるためジムに通い驚異の肉体を作り上げた。外見までも作りこむことでジェイク・ギレンホールの演技力にさらなる説得力が増し、これまで以上に役に成りきる迫真の演技が堪能できるはず。

≫ もはや別人!ジェイク・ギレンホールの肉体改造が凄い

『ナイトクローラー』は視聴率至上主義のテレビ業界を舞台に、報道スクープ専門の映像パパラッチ・通称“ナイトクローラー”を主人公にした、いまだかつてハリウッドでは描かれなかった映画。ロサンゼルスで人々が眠りにつく間、傍受した警察無線を合図に、イチ早く事件・事故現場に駆けつけて被害者をカメラで捉える。執拗に、貪欲に刺激的な映像を求めて夜の街を這い回っては、手に入れた映像をテレビ局に売りさばいてカネを得る、現代社会の闇に迫る衝撃作。ジェイク・ギレンホール演じるルイス(ルー)は友達も家族もなく、ネットとテレビと共に孤独に暮らす不気味な男。「これまで演じてきた人物とはまったく異なっていた」と語るジェイク・ギレンホールの、狂気に満ちた怪演をぜひ映画館の大スクリーンで目撃したい。

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さらに、1996年に起きた出来事を基にしたサバイバル・アドベンチャー『エベレスト3D』も11月6日(金)に公開を控えている。監督は『ハード・ラッシュ』『2ガンズ』のバルタザール・コルマウクル。世界最高峰のエベレスト登頂の夢を叶えるべく世界各国から訪れた登山家たちが、自然が猛威を振るう“デス・ゾーン”で生き残りを賭けて闘いに挑む群像劇。キャストにジェイソン・クラーク、ジョシュ・ブローリン、ジョン・ホークス、ロビン・ライト、エミリー・ワトソン、キーラ・ナイトレイ、サム・ワーシントンらが集結。この豪華キャスト陣の中で見せるジェイク・ギレンホールの演技も見逃せない。

≫ 超過酷な登山をガチ体験!『エベレスト3D』メイキング映像
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今後控えている作品は2016年日本公開予定の『Southpaw』以外にも、アントワン・フークア監督と『Southpaw』に続いて再タッグとなる『The Man Who Made It Snow』、トム・フォード監督第2作目でエイミー・アダムスと共演予定の『Nocturnal Animals』、ジャン=マルク・ヴァレ監督&ナオミ・ワッツ共演の『Demolition』など、まだまだ止まることのないジェイク・ギレンホール。次はどんな人物に化けるのか、これからもその演技から目が離せない。


ジェイク・ギレンホール
1980年12月19日、アメリカ・ロサンゼルス出身。映画監督のスティーヴン・ギレンホールとプロデューサー兼脚本家のナオミ・フォナーの息子。姉のマギー・ギレンホールも女優として活躍中。11歳で映画デビュー。コロンビア大学に進学したが、キャリアを優先させるため中退。主演を務めた『遠い空の向こうに』(99)、『ドニー・ダーコ』(01)でハリウッド期待の若手俳優として注目を浴びる。『ブロークバック・マウンテン』(05)ではアカデミー賞初ノミネート(助演男優賞)を果たす。『ラブ&ドラッグ』(10)、『ナイトクローラー』(14)ではゴールデングローブ賞主演男優賞ノミネート。アート系のインディーズ映画から大作映画まで幅広い作品への出演を続けている。今年行われた第68回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門の審査員を務めた。

『ナイトクローラー』
ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにて公開中
公式サイト:http://nightcrawler.gaga.ne.jp
【監督・脚本】ダン・ギルロイ
【出演】ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、ビル・パクストン
(2014/アメリカ)


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『エベレスト3D』
11月6日(金)TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開
公式サイト:http://everestmovie.jp
【監督】バルタザール・コルマウクル
【出演】ジェイソン・クラーク、ロビン・ライト、ジョン・ホークス、キーラ・ナイトレイ、ジョシュ・ブローリン、サム・ワーシントン、エミリー・ワトソン、ジェイク・ギレンホール
(2015/アメリカ)


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