9月11日(金)全国公開
映画『ミッドウェイ』特集
未曾有の戦いとなった第二次世界大戦の中でも、歴史を左右するターニングポイントとなった激戦として知られる“ミッドウェイ海戦”をテーマに、映画『インデペンデンス・デイ』シリーズ(96・16)のローランド・エメリッヒ監督が、日米両軍に敬意を捧げて史実を再現した映画『ミッドウェイ』が、9月11日(金)より全国公開される。
観客のド肝を抜く一大スペクタクル映像の第一人者として知られる監督が、ハリウッド俳優とともに、豊川悦司、浅野忠信、國村隼ら日本の豪華俳優陣もキャストに迎え、ド迫力の戦闘シーンの裏側に隠された、日米双方の英雄たちによる情報戦や頭脳戦、空中戦の舞台裏に迫っていく。日本の運命を変えた3日間の海戦の全貌が、およそ80年の時を越え、いまスクリーンで甦る!(文/渡邊玲子)
◇異文化に対する敬意を払って作られた、かつて類を見ない戦争映画
歴史を語る上では、どの視点からどの部分にフォーカスを当てて描くかによって、見え方がガラリと変わるものであることは、世界中の誰もが知るところ。だが、本作がこれまでの戦争映画と大きく異なるポイントも、まさにその点に尽きると言えるだろう。アメリカ・中国・香港・カナダの合作映画ではあるものの、米軍一方だけに肩入れすることなく、フェアな視点から歴史的な事件を捉え直しているからだ。
山本五十六連合艦隊司令長官を演じた豊川悦司が「日本の芸術と文化をよくリサーチしていることがわかった」と保証するとおり、製作側が異文化に対する敬意を払って作っているという点からも、本作が他の戦争映画とは一線を画しているのが伝わってくるはずだ。たとえ壮大な歴史の一片に過ぎずとも、激戦を交わすことになった日米軍を担う面々のなかには、国を愛し、覚悟を持って戦い抜いた、誇り高き男たちがいたという事実に、胸をアツくたぎらせずにはいられない。
◇日本の運命を変えた“ミッドウェイ”での3日間の舞台裏に肉迫!
1941年、戦争の早期終結を狙う山本五十六連合艦隊司令長官の命により、日本軍によるアメリカ艦隊への奇襲とも言える真珠湾(パールハーバー)攻撃が仕掛けられ、思わぬ攻撃で大打撃を受けたアメリカ海軍は、新たな指揮官として士気高揚に長けたニミッツ大将を任命。両国のプライドをかけた一歩も引かない激しい攻防が繰り広げられるなか、日本本土の爆撃に成功したアメリカ軍の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した戦いを計画する。
一方、真珠湾の反省から、日本軍の暗号解読など情報戦に注力したアメリカ軍は、その目的地を“ミッドウェイ”であると予想し、限られた全戦力を逆襲に注ぐ大一番の賭けに出る。そして1942年、ついに北太平洋のハワイ諸島北西のミッドウェイ島で日米の両軍が激突する。巨大な航空母艦、世界最大の大和を含む超弩級の戦艦、戦闘機、急降下爆撃機、潜水艦が出動し、空中、海上、海中、そのすべてが戦場となったのだった……。
◇構想20年。エメリッヒ監督による、日米双方の兵士への鎮魂の想い
資料によればエメリッヒ監督はなんと20年もの間、ミッドウェイ海戦を映画化したいと願い続けてきたといい、その理由を「アメリカやヨーロッパでナショナリズムが台頭してきている今、若者たちの中には、自分が謳歌している自由のために戦ってくれた人々のことを知らない人もいるからだ。多くの苦難があり、大勢の人々が命を落とした。でも、彼らの死には理由があったんだ」と説明する。
そしてさらに、日米双方への平等な視点を持って描いた理由について「ドイツ人としての責任感があった。日本人を単なる敵としてではなく、敬意を持って描くことを心掛けたよ。多くの命が失われる戦争には勝者は無く、敗者しかいない。だからこそ、二度と起きてはならない戦争を描いたこの映画を、日米の海軍軍人たちに捧げる内容にしたかった」と激白。そんな並々ならぬ思いが多くの米国の観客の心を動かし、全米公開後「日米両軍を同じ人間として、公平な視点で描いていることが何より素晴らしい」という高い評価へとつながった。
また、これまでアメリカは知らなかった日本軍の新しい資料が大量に発見されたことも、本作の製作を可能にしたといっても過言ではない。「ミッドウェイの戦いを今までよりも、明確かつ完全な形で理解するうえで大いに役立った」と、本作の脚本家も語っている。
時系列に則り、史実を忠実に再現している一方で、“ハリウッドの破壊王”との異名も持つエメリッヒ監督が「製作に120億円を費やした」というだけあって、一級品のエンターテインメントとして夢中になれる要素も満載だ。陸・海・空、そして海中を舞台に、「これでもか!」と言わんばかりのド迫力の戦闘シーンが繰り広げられており、否が応でもスクリーンにくぎ付けにさせられる。主観と客観が巧みに入り混じったカメラアングルも絶妙で、戦闘機が急降下する際には、まさに自らも戦場に居合わせているかのような臨場感に打ちのめされ、現実世界に戻るまでにしばし時間がかかるほど。脳髄をも揺さぶるほどの映像と音なくしては、当時の状況を再現することができなかったことが、この映画を観れば一目瞭然なはずだ。
◇アメリカ政府全面的協力による機密場所での撮影
ハリウッドならでは威力が最大限に発揮されているのが、アメリカ国防総省の全面的な協力を得て、これまで機密とされてきたアメリカ海軍の潜水艦ボーフィンの内部に、フォード島やパールハーバーの施設、さらにはハワイのヒッカム空軍基地などの撮影が特別に許可されたこと。まさに本物にしか出せない重みが、スクリーンを通して観客へと迫りくる。本作の脚本が、国防総省のプレス担当者の心を動かしたというわけだ。
なお、米軍の艦上機は、SBDドーントレスとTBDデヴァステイターが再現された。「TBDは1機も残っていないので、これが地球上で唯一の存在だ。手に入れられるすべての資料に目を通して構造を調べて実物そっくりに造った。博物館にあってもいいくらいの出来栄えだ」と、プロダクション・デザイナーも自信満々だ。
一方、日本の軍艦は第一次世界大戦の頃に造られたものだといい、「木材が多用されていて、ブリッジにすら本物の家具が置いてあった。真鍮やマホガニーなど温かみがある色から、将校たちがはめている手袋の白まで、その美しさがわかるはず。アメリカ人には、軍艦をそういう美しいものとしてとらえる視点はなかった」と、セットデコレーターが解説している。
◇日本の実力派俳優との重厚なコラボレーション
本作には、山本五十六、チェスター・ニミッツをはじめとした実在の人物を演じるために、ウディ・ハレルソン、パトリック・ウィルソン、デニス・クエイド、アーロン・エッカートに加え、豊川悦司、浅野忠信、國村隼といった日本を代表する実力派俳優が出演していることも、大きな見どころの一つといえるだろう。キャスティングについて監督は「運が良かった」と語り、その理由を「マーティン・スコセッシ監督の『沈黙‐サイレンス‐』に参加していたコーディネーターに、優れた俳優を紹介してもらえたんだ」と明かしている。
通訳を介しての演出であったことから監督は「難しい面もあった」としながらも、「でも良い演技は感覚的に分かったよ」と手ごたえを感じている様子。本編完成後を目にした米国の俳優陣たちからの、日本人キャストの演技への反応も上々だったといい「共演シーンがなかったアメリカ側の俳優たちも、初めて試写で日本のパートを観て感激していたんだ。彼らを絶賛する声を何度も耳にしたよ」と胸を張る。
戦争という究極の危機的状況下において、彼らの命運を分けたものとはいったい何だったのか──。頻発する大災害、未知のウイルスによる世界的被害、戦争に代わりいくつもの危機に直面する現代の我々に、きっと歴史は大いなる気づきを与えてくれるはずだ。感染症対策をしっかりした上で、かつてないこの戦争ドラマを、ぜひスクリーンで体感して欲しい。
映画『ミッドウェイ』は9月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
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