映画『いのちの停車場』完成披露試写会が14日、都内・東京国際フォーラムにて行われ、吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、南野陽子、小池栄子、みなみらんぼう、泉谷しげる、中山忍、石田ゆり子、田中泯、西田敏行、成島出監督が登壇した。
南杏子による同名小説を『八日目の蟬』『ソロモンの偽証 前篇・事件 / 後篇・裁判』などで知られる成島出監督が映画化。金沢の小さな診療所・「まほろば診療所」を舞台に“いのち”に優しく寄り添う医師と、避けることのできない死を迎える患者とその家族が、それぞれの立場から病と向き合い、葛藤し、成長してゆく姿を描いた物語。主演の吉永小百合は122作目にして初の医師役に挑戦。共演に松坂桃李、広瀬すず、西田敏行をはじめ、石田ゆり子、南野陽子、柳葉敏郎、小池栄子、泉谷しげるらが名を連ねる。
12名の登壇者が、3つのパートに分かれて登壇した本イベント。まずは、在宅治療を望む妻を愛しているが、老老介護に疲弊する並木徳三郎を演じた泉谷、末期癌を患っているが、芸者として最期まで自分らしく生きる選択をした寺田智恵子を演じた小池、「まほろば診療所」メンバーが集う憩いの場「BAR STATION」のマスター・柳瀬尚也を演じたみなみ、咲和子(吉永)が幼い頃に亡くなった母・白石泰代を演じた中山が登壇。それぞれが演じたキャラクターの紹介映像が流れたのち、ステージに現れた4名。
それぞれが完成の喜びを述べるなか、中山は「岡田(裕介)会長が客席をこの客席を見たら、きっと喜ばれただろうと思うと胸がいっぱいです。限りある命を大切にしたいと思える素晴らしい映画になっています」と、本作の製作総指揮を務めるも、昨年亡くなった故・岡田裕介東映グループ会長を偲び、涙ぐみながらの挨拶となった。また、このタイミングで成島監督も登場し「色々なことを乗り越えて今日を迎えられたことが感無量です」とコメント。
監督からの演技指導について聞かれると、みなみは「四十数年ぶりに映画に帰ってきました。台本に”歌をくちずさむ”という箇所があったんですが、監督から『一曲作ってくれないか』と言われ、一晩で作曲して、次の日本番でした。すごいことやらせるもんだなあと思いましたが、本番では横にいた西田さんが口ずさんでくれて二重奏になり、孤独が救われました。本編でも登場しますので、お楽しみに」と撮影秘話を語る。
小池は「素晴らしい先輩方のお芝居を観て、涙を流しながら完成した作品を観ました。私は私らしく生きていく、という覚悟を胸に演技をしていました」と述べ、中山は「役を頂いた時から嬉しくて浮き足立っていたんですが、最初のカメラテストの時に『お芝居しないでください』と監督から言われてはっとしました。その後は、咲和子のお母さんとして、ただその場にいようと心がけました」と撮影時を振り返る。
泉谷は「ゴミ屋敷に住む役を演じたんですが、まるで本物のようなネズミの死体まで用意されていて驚きました。その撮影中、岡田さんが居てくれて、ずっと喋っていました。私は東映映画が好きなので、東映映画の奥の深さについて語っていました。今日は亡くなった岡田会長を応援する気持ちで本日はやって参りました。出番は多くないですが、キャンペーンを盛り上げたいと思っています。監督、出番もっと増やせコノヤロー(笑)」と会場の笑いを誘った。
次のパートでは、咲和子の父親で、自らの”いのちのしまい方”を咲和子に託す白石達郎を演じた田中、再発した癌の治療のため、まほろばを訪れた咲和子の幼なじみ・中川朋子を演じた石田、小児癌を患う娘に迫る死を受け入れられずにいる母親・若林祐子を演じた南野が、同じく紹介映像の後に登場。田中が「皆さんにお会いすると、撮影所で緊張していたあの感じが戻ってきます。ぜひ、映画を楽しみにしていてください」と挨拶すると、成島監督を含めたクロストークが開始。
石田は「岡田会長にも薦めていただき、原作にはない本作オリジナルの女流棋士役を演じました。実はモデルとなる小川誠子さんという方がいらっしゃるんですが、小百合さんのお友達でもあるので、小百合さんが違和感を覚えないように意識しました」とコメントすると、「(誠子さんに)そっくりで本当に驚きました」と監督。石田は続けて、「小百合さんに『自撮りしません?』と問いかけるシーンの撮影がすごく嬉しかったです。十代の頃から(小百合さんに)憧れていたので、こういう日が来ることがとても幸せでした」と撮影時の思い出を振り返った。
田中は「吉永さんというスターのお父さん役ということで、(オファーを受けた時は)本当に驚きました。撮影の期間は必死の思いでした。記憶に残り続ける映画になると思います」と述べると、監督は「泯さんは病に倒れる役で、『(役作りのために)5キロ落としたい』と撮影前に言われました。ですが、既にダンスで絞られた身体ですから痩せる部分がないと私は思ったんです。それでも、撮影時にはしっかり5キロ以上痩せられていて。その気迫はスクリーンにも映っています」と田中の役作りに対し尊敬の意を示した。
また、南野は「監督はまるで『まほろば診療所』の先生のような、こちらのやりたいことに寄り添っていただきました。色々な方が直面した死について描かれている作品ですが、生きることの素晴らしさや、どう生きていくかなど、皆さんにも自分の生き方を改めて考えていただける作品になったと思います」と作品への想いを述べた。
そして、本作の主人公で、東京の救命救急の現場で働いていたが、とある事件をきっかけに在宅医として故郷・金沢の「まほろば診療所」で働き始めることとなった白石咲和子を演じた吉永、咲和子を慕って東京からやってきた医大卒業生・野呂聖二を演じた松坂、亡くなった姉の子を母親代わりに育てる、まほろばの看護師・星野麻世を演じた広瀬、個性的なスタッフと患者たちをあたたかく包み込む「まほろば診療所」院長・仙川徹を演じた西田の紹介映像が放映された。
映像が終わると、重厚感のある音楽が流れ、暗闇の中から青くきらめく光が溢れ始める演出が。スクリーンが上がると、”いのちのつながり””人と人とのつながり”をイメージしたリボンの装飾と本作のタイトルが表れ、あたたかい光に包まれながら4人が登場した。
まずは吉永が「大変な思いの中クランクインしましたが、みんなの力で作ったいのちの停車場が完成披露試写会を今日迎えられたこと、とても嬉しく思います」と挨拶。松坂は「皆さまに対面して作品を届けられるこの機会にとても喜びを感じます。しっかりと観ていただきたい作品です」とコメントをすると、広瀬も「大先輩とご一緒できて、(自分にとって)宝物のような、希望のある作品になりました。久々の舞台挨拶でドキドキしています」と続けた。西田は「真っ直ぐな映画です。ストレートに色んな問題を投げかけている作品です。コロナ渦で大変な中、スタッフやキャストの皆さんの情熱がそのまま投影されています。いろんな”いのち”たちに優しく問いかけて、『人生、もう一度見直してみたら?』と語りかけてくるような、そんな作品になっています」とコメント。
122作目にして、初の医師役に挑戦した吉永は「分からないことばかりでしたが、監督が指示してくださったので安心しました。映画の中でドクターとして咲和子が成長すればいいと仰っていて」と撮影時を振り返ると、監督は「原作小説に出会ったとき、吉永さんのための物語だと思ったんです。ものすごく努力をされていて、それでもまだ成長しようとする吉永さんにぴったりだと思いました」と今なお挑戦を続ける吉永の人柄がうかがえる。
監督とのエピソードを聞かれると、松坂は「吉永さんが月なら、僕とすずちゃんが太陽のような存在で、と言われました」と振り返り、広瀬も「ラーメン屋さんで麻世が野呂に過去を語るシーンは、監督にご指導いただきながら撮影しました」とコメント。
撮影時に印象に残ったことに対しては、西田は「吉永さんが妻、桃李くんが長男、すずちゃんが長女と勝手に思っていました。私はお父さんですね。三十何年ぶりに吉永さんにお会いしたんですが、あの時のまだまだ初々しい吉永さんがそこに立っておられて、時は人によって不公平なものなのだと思いました」と述べた。
続けて、吉永と西田へ松坂と広瀬の印象を問う質問に対し、吉永は「すずちゃんは涼やかで、桃李くんはキリンのようにすくすくと成長されていて、見ていて楽しいおふたりです」とコメント。西田は「すずちゃんの活躍ぶりを見ていると、立派にお仕事をこなしていて大変嬉しいですし、桃李くんも、難しい役も多いですが出演した全ての作品が話題になっていて、日本の映画界を牽引している一人だと思っています」と続けた。
本日の試写会には来られなかったが、最期の時間を穏やかに過ごすことを望んでいるが、長年会えていない息子を気に掛ける元高級官僚・宮嶋一義を演じた柳葉敏郎との共演について質問されると、松坂は「僕と柳葉さんのシーンで、吉永さんがパワーをくれる”あること”をしてくださったんです。是非観ていただきたいと思います」と本作の見どころを語る。
最後は、吉永が「素晴らしい俳優さん方とのセッションのような現場でした。撮影が終わった後、岡田会長が亡くなるという悲しい出来事がありましたが、皆さまのあたたかい励まし、心から感謝しております。公開まで、たくさんの方に観ていただけるようアピール続けてまいりますので、お友達やご家族に感想などお話しいただけると、嬉しく思います」と締め括り、あたたかい雰囲気のなか締め括られた。
映画『いのちの停車場』は5月21日(金)より全国公開
(C)2021「いのちの停車場」製作委員会