第71回カンヌ国際映画祭の開催期間中に実施される「監督週間」に選出された映画『未来のミライ』。公式上映に、細田守監督と本編でくんちゃん役を演じた上白石萌歌が出席した。
今年が開催50年目の節目となる「監督週間」は、フランス監督協会が主催し、カンヌ映画祭から独立した並行部門。作家性を重視し、映画監督が世界に出て行く登竜門として知られており、これまでもソフィア・コッポラ、日本人では大島渚、北野武などが選出。また近年、「監督週間」に選出された、バンジャマン・レネール監督『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』(2012)、高畑勲監督『かぐや姫の物語』(2014)、クロード・バラス監督『ぼくの名前はズッキーニ』(2016)は、いずれも米国アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされている。今回は1,609本もの応募作品の中から、20本の長編作品が選ばれアニメーション作品では、『未来のミライ』だけが正式招待された。
細田監督と上白石は、5月16日(現地時間)の公式上映にあわせて現地入り。初のカンヌ訪問となる細田監督は、「まだ全然実感がないですが、初上映がカンヌで、カンヌの人たちと一緒に作品を観られることがとても楽しみです」とコメント。国際映画祭初参加となる上白石は「初の映画祭でとても緊張していますが、私自身も初めて観る今作を楽しみたいと思います」と、公式上映前に感想を語った。
公式上映会場となったのは、監督週間部門のメイン会場である「シアタークロワゼット」。8:45から行われた上映は、開場前から長蛇の列ができ、10代からシニア層までの劇場を埋め尽くす850人もの観客が来場。場内満席の大盛況の中、細田監督、上白石が場内に入場すると大きな歓声と拍手が起こった。会場を埋め尽くす人々からのリスペクトあふれる表情から、ここカンヌでも一目置かれる存在であることが伺えた。
上映中、上白石が演じるくんちゃんの4歳ならではの天真爛漫なしぐさ、その愛くるしい表情に何度も笑いが起き、家族それぞれの想いに感嘆の声が漏れ聞こえていました。本編上映後、観客からの大きな拍手を受け、細田監督と上白石は、興奮した観客の余韻に浸りながら上映後舞台挨拶に登壇。
上白石は「Bonjour!Je suis Moka Kamishiraishi.(こんにちは!上白石萌歌です。)」と緊張しながらも流ちょうなフランス語で挨拶。4歳の男の子を主人公にするという世界の映画史でもあまり例のないチャレンジをした本作に込めた想いについて、細田監督は「今まで家族をモチーフに作品を作ってきました。今回は4歳の男の子のとても小さなお話ですが、どこにでもある一つの家族を通して、何百年、何千年と続く人生のループみたいなものを描きたいと思って作りました」とコメント。
また、アニメーション映画について「アニメーションという表現で作る映画はまだまだやっていないことが多い。(高畑勲監督や宮崎駿監督といった方々が)これまでたくさんの作品を生み出されており、そのバトンを受け継ぐように、様々なことにチャレンジをし、表現していかなければいけないと思います」と想いを語った。
舞台挨拶終了後も会場の外には多くのファンが詰めかけ、2人は大きな声援に包まれながらサインや写真の求めに応じていた。映画を観た観客たちは「傑作!細田監督の全作品を観ているが、今までの作品にある色々な要素が取り入れられていて、集大成の作品だ!」(20代フランス人男性)「この映画は家族の良い面と悪い面の両方を描いていて、すごくリアルに感じた。自分の家族のことを思い出した。」(20代フランス人女性)「感動した。少年時代に帰った気分になった。」(20代フランス人男性)など、様々な絶賛の声が届いた。
また、本作は、世界最大規模のアニメーション映画祭として知られているフランスの「アヌシー国際アニメーション映画祭2018」の長編部門コンペティションにも選出されており、細田監督の参加も決定した。さらに、本作が公開される今夏には、細田監督がアジア数ヵ国を巡る舞台挨拶ツアーも決定。世界各国での本作への期待がますます高まっている。
舞台挨拶を終えた感想
細田守監督 コメント
日本よりも先に、世界の方々に観てもらうことが大変なプレッシャーを感じていました。初めての上映はいつも緊張しますが、上映が終わった後、たくさんの拍手を頂けて今はとてもホッとしています。映画が出来上がり、お客さんが観終わって初めて映画が完成します。子どもが生まれる瞬間と同じ気持ちで、カンヌのお客さんに、映画の誕生の瞬間に立ち会っていただき、祝福されながら無事に映画が生まれました。上映中には何度も笑い声が聞こえ、お客さんの反応を直接感じることが出来て嬉しかったです。次は日本で、夏休みの時期に公開なので家族みんなで楽しんでもらいたいです。
上白石萌歌 コメント
監督の隣で初めて作品を観させていただくこととフランス語での挨拶がとても緊張しましたが、しっかりと想いが伝わって良かったです。カンヌで映画が生まれた瞬間に立ち会うことが出来てとても幸せで、夢のような時間でした。映像の美しさ、音楽の壮大さを4歳のくんちゃんの目で冒険出来るという作品の素晴らしさを日本でも自信を持って伝えていきたいです。
映画『未来のミライ』は7月20日(金)より全国東宝系にて公開
©2018スタジオ地図