『リップヴァンウィンクルの花嫁』岩井俊二、“弟子”行定勲を絶賛「キャスティングが天才的」

『リップヴァンウィンクルの花嫁』岩井俊二監督×『ピンクとグレー』行定勲監督のスペシャルトークショーが11日、都内・Apple Store,Ginzaにて行われた。

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行定監督が助監督時代、岩井監督作『Love Letter』(95)、『スワロウテイル』(96)に参加していたこともあり、20年以上の付き合いで師弟関係ともいえる間柄の2人。岩井監督は「行定は一番優秀で、大切な片腕でしたからね。いなくなってから大変でしたよ。彼はキャスティングが天才的で、連れてくる子がみんないい子ばかりだった。彼の存在は非常に助かっていましたね」としみじみと振り返り、行定監督も「岩井さんに『お前は監督になるんだろうからさ、それまではうちでやってよ』って言われた一言が、今でも支えになっているんです。この人は日本映画を変えるなって思っていた。今回の最新作もキャスティングが絶妙でうまいですよね。悔しいです」と賛辞を贈った。

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助監督を離れ、日本映画界の第一線を走り続ける行定監督の姿を見守っていたという岩井監督は「彼は時々ハラハラしつつも、自分のテイストを上手くエンターテイメントに加えていて、こだわり続けているなぁって思います。彼の作品は”主人公不在”という永遠のテーマを掲げている気がして、『ピンクとグレー』はその中でも一つの到達点かなって思いますね。甘酸っぱい感じから、アルコールに蜂蜜をたらして飲んだようなビタースウィートを味わえる。観ていて感無量でした」と称賛した。

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一方、「『リリイ・シュシュのすべて』を観た時、『これが岩井美学なのか』と衝撃を受けた。スクリーンからはみ出るくらいの心地よい圧を感じる。『この人には敵わないな』と思いました」と最敬礼した行定監督。最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』については「絶望の中に幸せって必ずあるってところに胸が打たれましたね。絶望のままじゃいられない。だから小さな幸せを見つける。岩井さんは壮大な何かに繋げようとしているんだって思いました」とコメント。

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岩井監督は本作について「僕は海外にいて感じたのは、3.11が起こる前の日本は、どこかイジメが蔓延している教室のような雰囲気でした。そんな中で何を表現したらいいのか、みんな何か起こさなきゃいけないって思ってはいても、前に進めないような感じ。そんな時に3.11が起こって、そこで何が描けるかって考えた時にこの作品が生まれました」と製作の経緯を明かした。さらに「みんなが正しいと思っていることが本当に正しいのか。昔はテレビの前で呟いていたことが、今はSNSで呟くことができる」と吐露。「加害者は自分の意見を言っているだけだけど、それが一塊になった時、相手に心的傷害を与えるし、恐ろしいこと。それは一瞬にして人の生活を踏みにじってしまう」と訴えかけた。

『花とアリス』以来12年ぶりの長編実写映画となる岩井俊二監督最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、SNSで知り合った結婚相手から突き放され、バイトに没頭する毎日をおくる皆川七海(黒木華)と、彼女に奇妙な仕事を斡旋し続ける「なんでも屋」安室(綾野剛)、七海のバイト仲間・里中真白(Cocco)らが織りなす、嘘(夢)と希望と愛の物語。

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』は3月26日(土)より全国ロードショー

【CREDIT】
原作:岩井俊二『リップヴァンウィンクルの花嫁』(文藝春秋刊)
監督・脚本:岩井俊二
出演:黒木華/綾野剛/Cocco ほか
配給:東映
公式サイト:http://rvw-bride.com

©RVWフィルムパートナーズ

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