『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』
特集
ニューヨークやロンドン、バルセロナ、ローマなど、世界各地の魅力溢れる街を自在に駆け巡り、時には1920年代のパリや黄金期のハリウッドへとタイムスリップしながらも、恋や人生に悩める男女の姿をユーモア&ウィットたっぷりに活写し続けてきた映画監督、ウディ・アレン。フィルムメーカーの待望の最新作『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』が、ついに7月3日(金)に劇場公開される。公開に先立ち、一足先に本作の魅力を紐解いてみたい。
◇ウディ・アレン、記念すべき50本目は“雨のNYを舞台にしたロマンチック・ラブコメディ”
今年12月に御年85歳を迎えるウディ・アレン監督の記念すべき50本目にあたる本作は、その名の通り“雨に濡れるニューヨークの街角”で、運命のいたずらに翻弄される、うら若き男女のままならぬ恋の行方をリリカルに綴ったロマンチック・ラブコメディ。
流行を生み出す最先端都市でありながら、緑溢れるセントラル・パークや、厳かなメトロポリタン美術館、世界中のセレブに愛される老舗ホテル「カーライル」のべメルマンズ・バーなど、アレン監督がこよなく愛する古き良き風情も残すマンハッタンを、登場人物たちと一緒に旅しているかのような気分も味わる、まさに“ニューヨークの自由の女神に捧げるラブレター”とも言うべき作品なのだ。
◇名匠ウディ・アレンとティモシー・シャラメら“新世代のスター”たちが彩る珠玉のラブストーリー
『マンハッタン』(77)や『アニー・ホール』(79)など、アレン監督はこれまでにも自身のホームタウンであるニューヨークを舞台に数々の名作を発表してきたが、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』においては、まさに現代を代表するアイコニックな存在である、ティモシー・シャラメやエル・ファニング、セレーナ・ゴメスらをメインキャストとして起用。“新世代のスター”たちにあえてオーセンティックなラブストーリーを与えたことで、まさにいまのアレン監督にしか撮れない傑作を生み出した。
物語の主人公は、ニューヨークの裕福な家庭に育ちながら、両親の過大な期待から逃れるかのように地方の大学に通い、モラトリアムな日々を送るギャツビー(ティモシー・シャラメ)と、アリゾナの銀行経営者の娘で“学生ジャーナリスト”としてのキャリアを築こうと意欲に燃えるアシュレー(エル・ファニング)の、“絶世の美男・美女”カップル。ある日アシュレーが学校の課題で、有名な映画監督ローランド・ポラード(リーヴ・シュレイバー)に、マンハッタンでインタビューをする機会に恵まれる。生粋のニューヨーカーのギャツビーは、アリゾナ生まれのアシュレーに街を案内したくてたまらない。ギャツビーは自分好みのクラシックなスポットを巡るためのプランを詰め込むが、2人の計画は晴れた日の夕立のように瞬く間に狂いはじめ、思いもしなかった出来事が次々と起こるのだった……。
◇ゆるふわパーマに眼鏡なし、“シャラメ版ウディ・アレン”の破壊力
アイデンティティに悩む青年ギャツビーを演じるのは、ルカ・グァダニーノ監督作『君の名前で僕を呼んで』での名演ぶりが高く評価され、“水も滴るほど”の美しいルックスと繊細かつ確かな演技力により、ウェス・アンダーソン監督の『The French Dispatch(原題)』やドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE(原題)』、『君の名前で僕を呼んで』の続編など、話題作にも引っ張りだこの俳優、ティモシー・シャラメ。
“寝ぐせ風のボサボサ頭に黒縁眼鏡”がトレードマークの“ウディ・アレン監督の分身”という位置づけにしては、「いくら何でも美しすぎるのでは……?」と、思わず疑問を投げかけたくもなるのだが、ラルフローレンのジャケットやチェックのネルシャツ、細身のセーターに身を包み、小難しいことを早口でまくしたてながら猫背気味に歩くギャツビー(シャラメ)の姿が、なぜか完全に若き日のアレン監督と重なるのだから面白い。今どきの“ゆるふわパーマに眼鏡なし”のシャラメ版アレンは最強だ。
なかでも、シャラメが本作ならではの輝きを放っているのが、ジャズのスタンダードナンバーとして知られる「Everything happens to me」を、サラリとピアノで弾き語りしてみせるシーン。そのシーンの破壊力たるや、「ギャツビーの趣味がピアノ演奏で良かった……!!!」と、心の声がうっかり漏れてしまうほど。憂いを帯びた瞳を伏せながら、見るからに聡明そうな広い額に時折シワを寄せて歌うシャラメの姿は、かつて目にしたどの彼よりも色っぽい。また、劇中に登場する“何度もダメ出しされた挙句、うっかり濃厚になってしまう”キスシーンにも、うっとりさせられること間違いなしだ。
◇“光の魔術師”による神業と、エル・ファニングやセレーナ・ゴメスの魅力も炸裂!
もちろん本作において際立っているのは、決してティモシー・シャラメの美しさだけではない。「興奮するとしゃっくりが止まらなくなる」というキュートなアシュレーを演じたエル・ファニングの天真爛漫な癒しっぷりには、新作に行き詰まりを感じる映画監督(リーヴ・シュレイバー)や、妻の浮気現場を目撃して落ち込む映画プロデューサー(ジュード・ロウ)といった、いかにも業界風のイケオジのみならず、ディエゴ・ルナ扮する「女子の子宮をうずかせる」プレイボーイの人気俳優すら、メロメロになってしまうのも無理はない。かたや、ストレートな物言いで周囲を圧倒させる、ギャツビーの“学生時代の元カノの妹・チャン”役を演じた世界的歌姫セレーナ・ゴメスのコケティッシュな魅力も炸裂している。
ロマンチックな週末を送るはずが、まったくもって計画通りにいかないギャツビー&アシュレーの、思い思いのニューヨークの表情を印象的な光と陰影で抒情感たっぷりに映し撮るのは、「光の魔術師」の異名を持ち、『暗殺の森』『地獄の黙示録』『ラストエンペラー』など、映画史に君臨する名作を手掛けた巨匠撮影監督のヴィットリオ・ストラーロ。キャラクターの性格に合わせて固定カメラやステディカムを使い分け、さらに空模様に変化をつけることで、役柄の心情を表現してみせる“神業”を、本作において随所に披露している。
◇雨上がりの虹のような輝きを放つ映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』
本作でも、恋や人生に悩める男女の姿をユーモア&ウィットたっぷりに描き出したアレン監督。若き日のウディ・アレンを彷彿とさせる魅力を放つティモシー・シャラメ、天真爛漫なアシュレーをキュートに演じきったエル・ファニング、知的さと色気を兼ね備えたチャンを演じたセレーナ・ゴメスのコケティッシュな魅力……“新世代のスター”たちと名匠アレン監督が彩る珠玉のロマンチック・ラブコメディ『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』は7月3日(金)より全国の劇場で公開される。新型コロナウイルス感染症予防を徹底した上で、まさに“雨上がりの虹のような輝きを放つ”本作を、ぜひスクリーンで見届けて欲しい。
映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』は7月3日(金)より全国公開
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