“監督で観る” “俳優で観る”映画の楽しみ方。今注目の人やこれから注目すべき映画監督・俳優について紹介する【映画監督・俳優のすすめ】。Vol.3は独創的な世界観でSF映画の新たな傑作を次々と生み出すニール・ブロムカンプ。
Keyword 1:SF映画の申し子
「エイリアン」「近未来」「ロボット」というと、これまで数えきれないほど多くの映画が製作されてきたテーマである。しかし、ニール・ブロムカンプはそれらをテーマに全く新しい映画を生み出した。
誰も思いつかないような斬新なアイデア、あっと驚く大胆不敵なストーリー、奇想天外なキャラクター、ユニークで魅力的なガジェットの数々など、ニール・ブロムカンプ監督ならではの発想で、他の映画にはない独創的な世界観を作り出している。
一種独特の映画でありながら、これまで監督した長編映画3作品はいずれも全米初登場No.1の大ヒットを記録。監督デビュー作である『第9地区』は制作費3000万ドルという低予算ながら世界興収2億ドルを突破。さらに、作品賞を含む4部門で米アカデミー賞にノミネートを果たすという快挙を成し遂げた。
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Keyword 2:フィルモグラフィー
監督第1作目『第9地区』は、突如南アフリカ上空に現れた正体不明の宇宙船から降り立ったエイリアンと人類の共同生活を描いたSFアクション。監督自身が2006年に手がけた短編「Alive in Joburg」が下敷きとなっている本作では、「エイリアンが難民として地球へやってきた」という設定もさることながら、人類と共同生活を送るというストーリーが展開。さらに本作の主役のひとりといえる「エイリアン」は、昆虫や甲殻類を思わせ、不快感や嫌悪感を与えるような外見でありながら、共感できるキャラクターとして描かれているという点も斬新である。
『Alive in Joburg』(2006年/ニール・ブロムカンプ監督・脚本)
監督第2作目『エリジウム』は、22世紀半ばの荒廃した地球と、人類の楽園として造られたスペースコロニー“エリジウム”を舞台に、格差社会の底辺に生きる男の壮絶な闘いを描いたSFエンタテインメント。荒れ果てたスラムの上空に浮かぶ巨大宇宙船―そのインパクトのあるビジュアルだけで再び世界の目を釘付けに。劇中には数百年後の未来が舞台でありながら日本刀や手裏剣、武士の甲冑をイメージしたようなプロテクターが登場。マット・デイモン演じる主人公が装着する特殊な武器にも目を奪われる。そんなディストピアで描かれるのは差別やスラム、医療格差など、現代にも通じる問題。さらに、人類の未来を背負ってしまった男もまた、全く新しいヒーロー像として描かれている。
Keyword 3:新たな傑作の誕生
現在公開中の監督第3作目『チャッピー』は、人類史上初めてAI〈人工知能〉を搭載した二足歩行ロボットが主人公。本作もまた『第9地区』と同様、監督自身が2004年に制作した短編がもとになっている。
『Tetra Vaal』(2004年/ニール・ブロムカンプ監督・脚本)
本作では兵器ロボットが警察に協力している世界が舞台。ある1体のロボットが、人間の心に近いAI〈人工知能〉をインプットされる…という驚きのストーリーに加え、人間の子供のようなロボット“チャッピー”はこれまでになく斬新なキャラクター。人間との交流や成長のドラマ、“チャッピー”を脅威として追い詰める陰謀劇、予想外のラストなど、未体験の興奮が詰まった最新作は見逃せない。
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映画界に現れた新星から一気に一流の監督へと上り詰めたニール・ブロムカンプ。監督自身が明らかにした新作は、なんとあの『エイリアン』シリーズ最新作。Instagramで『エイリアン5』の監督になったと仮定したコンセプトアートを公開した後、正式に監督に就任したことを認めた。独創的なアイデアを持つ監督の次回作に期待せずにはいられない。
ニール・ブロムカンプ
1979年、南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。16歳の時、俳優シャールト・コプリーと出会い、彼の制作会社で3Dアニメーションやデザイン制作に関わる。18歳でカナダに移住。その後、VFXアーティストとしてキャリアをスタートさせ、TVシリーズ『ダーク・エンジェル』や映画『スコーピオン』などの制作を手掛けた。制作したCMや短編をきっかけにピーター・ジャクソンにその名前を知られるようになり、紆余曲折を経てピーター・ジャクソン製作により、短編「Alive in Joburg(原題)」を長編にブラッシュアップした『第9地区』で監督デビューを果たす。『第9地区』は世界的に大ヒットし、アカデミー作品賞と脚色賞にもノミネートされた。
『チャッピー』
5月23日(土)より公開中
公式サイト:http://www.chappie-movie.jp
【監督・製作・脚本】ニール・ブロムカンプ
【出演】シャールト・コプリー(チャッピー/声など)、ヒュー・ジャックマン、シガニー・ウィーヴァー、デーヴ・パテル
(2015/アメリカ/120分/PG-12)
© Chappie – Photos By STEPHANIE BLOMKAMP